著者
栁田 浩己 安藤 明彦 岡田 健太 長坂 昌一郎 石橋 俊 小谷 和彦 長谷川 修 谷口 信行
出版者
自治医科大学
雑誌
自治医科大学紀要 = Jichi Medical University Journal
巻号頁・発行日
vol.38, pp.27-39, 2016-03

神経伝導検査は,糖尿病神経障害を含めた末梢神経障害の評価に極めて有用である。その測定値は年齢や身長の影響を受けやすいとされるが,こうした影響に関する本邦の健常者での検討は少ない。今回,健常者ボランティアで年齢・身長・性別と,神経伝導検査各指標との関連を検討し,併せて当院での神経伝導検査基準範囲の設定を行った。神経伝導速度のほか,振幅・潜時・持続時間及びF波に関する各指標の基準範囲を求めた。年齢は上下肢の活動電位振幅と負の相関,身長は上下肢の活動電位振幅と負の,潜時と正の相関を認めた。F波に関しては,身長と最小潜時との間に正の相関(相関係数:正中0.79,脛骨0.78),平均潜時との間に正の相関(相関係数:正中0.76,脛骨0.72),最大潜時との間に正の相関(相関係数:正中0.66,脛骨0.64)を認めた。性別において多指標で有意差を認めたが,性別間の身長差・体格・解剖学的特徴に伴う差異が考えられた。軸索障害の指標として振幅の評価は重要であり,年齢・身長・性別の影響に関する留意が必要だが,今回の基準範囲設定により今後の診療への寄与が期待される。