- 著者
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安藤 精一
- 出版者
- 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
- 雑誌
- 日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
- 巻号頁・発行日
- vol.29, no.4, pp.245-253, 2000-07-15 (Released:2009-04-28)
- 参考文献数
- 21
脳分離体外循環下に手術した大動脈解離および胸部大動脈瘤10例 (SCP群) の脳血流, 脳酸素代謝について, 通常の体外循環下に手術した20例 (CPB群) を対照として比較検討した. 経頭蓋ドップラー血流計 (Labodop-DP100) で中大脳動脈血流速度 (MCAV) を測定し, 脳血流量の評価に用いた. また, 脳循環状態の評価のために鼓膜温, 膀胱温, 浅側頭動脈圧, 内頸静脈圧, 動脈血ヘモグロビン濃度をそれぞれ経時的に測定した. さらに, 脳酸素代謝状態の評価のために動静脈血酸素分圧, 二酸化炭素分圧, 酸素飽和度をそれぞれ経時的に測定し, 脳酸素摂取率, 脳酸素消費量指数を算出した. SCP群では, 脳分離体外循環中脳灌流圧が低く, さらに脳温も低く脳代謝が抑えられているはずにもかかわらず, 二酸化炭素分圧が高値を推移していたため, CPB群と同等の脳血流を維持していた. このことから脳分離体外循環中脳血流量を増やすには, 二酸化炭素分圧を高く維持することが重要であり, その結果SCP群の脳酸素代謝がCPB群と同等に維持された.