著者
安藤 規泰
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.108-118, 2018-08-01 (Released:2018-08-15)
参考文献数
59
被引用文献数
1 1

飛行は,昆虫を特徴づける行動の1つであるが,飛行の研究は昆虫に限らず,動物一般の運動制御にとって重要な発見をもたらしてきた。運動制御機構の研究のモデルとなる動物には,主にサバクバッタ,ハエ,そしてスズメガが用いられてきたが,なかでもサバクバッタは中枢パターン発生器の発見で有名であり,昆虫飛行の代表的なモデルである。ハエは小さいながらも極めて優れた飛行能力を有しており,それを支える感覚運動系の研究に多く用いられてきた。特にショウジョウバエは,近年の遺伝子工学の進歩により,飛行の神経メカニズムの解明になくてはならない存在である。一方,スズメガは,サバクバッタと並ぶ大型の実験昆虫で,ハエに匹敵する高い運動能力を備えている。そして,形態も内部メカニズムも両実験昆虫の中間的な特徴を有しており,飛行の多様性を知るうえで無視できない存在である。本稿では,このスズメガを中心に,筆者らがこれまで進めてきた自己受容器による感覚フィードバック経路の解析,自由飛行における飛翔筋活動と羽ばたき運動計測,そして飛翔筋活動による胸部外骨格の変形の解析という,互いに密接に関連した研究の概要を紹介する。さらに,他の研究グループから近年報告されたユニークな飛行のメカニズムの話題を合わせて紹介する。最後に昆虫飛行の研究の今後の展望として,統合的な理解を進めるために何をすべきかを議論する。
著者
安藤 規泰 村山 裕哉
出版者
東京大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究では,平衡感覚を喪失したスズメガに慣性センサを搭載し,得られた情報をもとに筋肉に電気刺激を行い飛行の安定性を回復させることを目指した。主要な成果として,1)スズメガに搭載可能な40 mgの慣性センサユニットを開発し,6軸の加速度・角速度情報を自由飛行下で高速に計測することに成功した,2)慣性センサ・コントローラ・電気刺激からなる飛行制御回路を試作し,ピッチ角速度に応じて腹部の屈曲を制御することに成功した,3)触角切除により平衡感覚を喪失しても,スズメガは安定なホバリング飛行が可能であることを示した,4)平衡感覚の情報が頭部の運動を介して視野の安定に寄与していることを示した,が挙げられる。
著者
安藤 規泰
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.108-118, 2018-08-15
被引用文献数
1

<p>飛行は,昆虫を特徴づける行動の1つであるが,飛行の研究は昆虫に限らず,動物一般の運動制御にとって重要な発見をもたらしてきた。運動制御機構の研究のモデルとなる動物には,主にサバクバッタ,ハエ,そしてスズメガが用いられてきたが,なかでもサバクバッタは中枢パターン発生器の発見で有名であり,昆虫飛行の代表的なモデルである。ハエは小さいながらも極めて優れた飛行能力を有しており,それを支える感覚運動系の研究に多く用いられてきた。特にショウジョウバエは,近年の遺伝子工学の進歩により,飛行の神経メカニズムの解明になくてはならない存在である。一方,スズメガは,サバクバッタと並ぶ大型の実験昆虫で,ハエに匹敵する高い運動能力を備えている。そして,形態も内部メカニズムも両実験昆虫の中間的な特徴を有しており,飛行の多様性を知るうえで無視できない存在である。本稿では,このスズメガを中心に,筆者らがこれまで進めてきた自己受容器による感覚フィードバック経路の解析,自由飛行における飛翔筋活動と羽ばたき運動計測,そして飛翔筋活動による胸部外骨格の変形の解析という,互いに密接に関連した研究の概要を紹介する。さらに,他の研究グループから近年報告されたユニークな飛行のメカニズムの話題を合わせて紹介する。最後に昆虫飛行の研究の今後の展望として,統合的な理解を進めるために何をすべきかを議論する。</p>
著者
勝又 聡一郎 安藤 規泰 神崎 亮平
出版者
The Robotics Society of Japan
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.27, no.7, pp.711-717, 2009-09-15
被引用文献数
1

We developed an two-wheeled insect-sized robot to evaluate odor source localization algorithms of the male silkmoth (<i>Bombyx mori</i>). For fast and stable acquisition of sensory information, we used atmospheric ions and ion sensors to simulate odorant catch by insect olfactory sensors. The robot has two ion sensors, and a microcomputer for processing the sensor output, motor control and communication with external devices. To minimize its size, we used two modified servomotors as actuators, which enabled the robot to move in the same manner as a walking silkmoth. We used wheel encoders for feedback control of wheel position. The encoder output can also be used as a simulation of optic flow, which is necessary for speed and turn control in insect locomotion. By employing the robot, we evaluated the performance of two odor source localization models: one is based on the fixed programmed behavior of the silkmoth and a second model additionally includes course control dependent on the amplitude difference of ion sensor output on opposite sides of the robot. The results indicate that the robot based on the latter model was superior in ion plume tracking. Further evaluations of algorithms using our insect-sized robot will be an important tool for understanding behavioral mechanisms of orientation and applying them to robotics.