著者
安藤 馨
出版者
一橋大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

前年度に引き続き、率直に言って、コロナ禍の影響はとりわけ研究の公表に関して本研究においても避けることはできなかった。しかし、事実認定的な法的言明が認定者の動能的な(=非認知的な)心的状態を表出しており、表象主義 representationalism の下で信念がそのようなものとして描かれがちであるような、純粋に認知的な(すなわち、世界をそのまま表象しようとする、世界から心への適合方向のみを有する受動的な)心的状態を表出するものではない、という点についての理解が深められた。すなわち、事実認定的な言明が表出する「pということにして話を先に進めよう being for proceeding as if...」という心的態度がどのようなコミットメントを伴っているかについて、理解が深められた。「p ということにして話を先に進めよう」という主体は、以降の推論において、not p を主張しないというコミットメントを有し、以降の推論において p → q を受け入れた場合には q を主張するというコミットメントを有することになる。他方で、これらのコミットメントは、いわゆる推論主義 inferentialism が、p を主張するという行為に伴うものとして挙げているコミットメントそのものである。したがって、事実認定的な法的言明ではないような、通常の認知的主張については表象主義的な意味論が妥当なものとして成立する一方で、非認知的なコミットメントを伴う事実認定的な法的言明については推論主義的分析が適用可能である、ということができるようになる。これは、「pである」という事実認定的法的言明を「pは法的に正当である」という規範的様相に包まれたものとして分析してきたやり方を大きく離れ、法的言語を意味論レベルで通常の言明と異なった構造を有する特異なものとして分析するという可能性を示すものである。
著者
安藤 馨
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

規範的排除的法実証主義と記述的源泉準拠的包含的法実証主義を法体系の命令説モデルに基づき擁護し、更に権利概念のホーフェルド分析と法命令説を結合することによって、ある法的権利(すなわちそれらに相関的な法的責務)を定める法規範の帰結主義的道徳的正当化の条件を、法規範がそれらの名宛人に対して有する行為指導性の様態に応じて分類・同定した。
著者
安藤 馨
出版者
神戸大学
雑誌
神戸法學雜誌 (ISSN:04522400)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.147-185, 2013-03
著者
安藤 馨
出版者
神戸大学
雑誌
神戸法學雜誌 (ISSN:04522400)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.85-115, 2014-03
著者
安藤 馨
出版者
神戸大学法学部
雑誌
神戸法學雜誌 / Kobe law journal (ISSN:04522400)
巻号頁・発行日
vol.63, no.4, pp.85-115, 2014-03 (Released:2014-04-18)
著者
安藤 馨
出版者
神戸大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

第一に、当為言明一般について、認知主義に基盤を置く型の混合的表出主義としての実在論的表出主義の説得性を擁護した。第二に、法的言明の意味論について、命令法の意味論的内容としての命法規範についての言明とする、実在論的表出主義による説明を与えた。第三に、ロナルド・ドゥウォーキンが法実証主義に対して提出してきた「理論的不同意問題」が、ハートの法実証主義の非認知主義に基盤を置く型の混合的表出主義の意味論的問題そのものであることを明らかにし、実在論的表出主義がこの問題を回避するための有力な理論的選択肢であることを明らかにした。
著者
安藤 馨
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

第一に、法的言明について真理性を発話者・評価者へと二重に相対化する型の意味論的相対主義の適用可能性を検討した。その結果、法実証主義的な規約主義と適合的な外見にもかかわらず、不同意の存在が説明できないという古典的難点が必ずしも克服されないことから、固有の理論的長所が意外に乏しいことが明らかとなった。第二に、法的判断と判断主体の行為者性(agency)の問題を検討した。行為者の単位については、方法論的個人主義の再検討を通じて団体の実在を認めつつ、その構成員と全体の間の義務の相克について明らかにした。また、命令説から制裁説までの法モデルのスペクトラムと法的主体の行為者性の内在的連関を明らかにした。