著者
高山 佳奈子 松宮 孝明 神例 康博 辻本 典央 安達 光治 平山 幹子 品田 智史
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

定例の「経済刑法研究会」を2018年9月30日、同11月11日、2019年2月17日にいずれも立命館大学朱雀校舎にて開催した。検討した内容は次のとおりである。(1)共同執筆により出版予定の書籍『新経済刑法入門(第3版)』について、特に、新たに設ける内容である、「銀行預金をめぐる犯罪」および「『独占禁止法違反の犯罪』への公正取引委員会の対応」を中心に検討を加えた。後者に関して、公正取引委員会の中里浩氏を招へいし、専門的知見の提供を得た。(2)華東政法大学と合同で開催する経済刑法シンポジウムの内容について、日本側からは「AIと刑法」「AI自動運転と緊急避難」「詐欺罪」「仮装通貨と経済犯罪」「背任罪」をテーマとすることを決定し、各報告担当者からのプレ報告を受けて討論を行った。(3)これまでの華東政法大学および武漢大学との国際シンポジウムの成果を受けて、書籍『日中経済刑法の最新動向』を出版する予定であり、その原稿の作成・検討を行った。収録予定の論文のテーマ(日本側)は、「市場競争の激化と経済犯罪の規制――証券犯罪を中心に――」「会社再建と強制執行妨害の罪」「コンピュータ関連の詐欺罪について」「悪質商法と経済犯罪――ねずみ講・マルチ商法の規制を題材に――」「食品の安全と過失論の役割」「食品の安全と刑事責任」「刑事製造物責任と組織の責任・個人の責任」「日本における過失犯論の発展」「犯罪論体系と比較法研究」「証券取引法から金融商品取引法へ」「インサイダー取引の刑事規制」「日本法における相場操縦・開示規制違反」「ネット金融と財産犯」「日本における利殖商法と組織的詐欺罪」である。
著者
安達 光治
出版者
日本犯罪社会学会
雑誌
犯罪社会学研究 (ISSN:0386460X)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.7-21, 2006-10-18 (Released:2017-03-30)

「生活安全条例」は,現在では,多くの都道府県ないしは市町村で制定されており,また,この種の条例制定の促進は,政府の政策でもある.「生活安全条例」は内容面から次のように分類できる.すなわち,(1)地域の生活安全活動の理念を提示するもの,(2)学校,道路,公園,集合住宅等の設計において防犯の観点による行政や警察の積極的関与を規定するとともに,暴力犯罪や侵入窃盗などの前段階の行為を処罰するもの,(3)生活安全と生活環境の美化を融合させたもの,である.このような条例制定の狙いは,地域住民の防犯活動への積極的関与を促し,地域社会の犯罪抑止機能を回復することにある.条例は,地域住民の防犯に関する具体的なニーズに基づき,地域住民の主体性を前提とした民主的なプロセスを通して制定,展開されなければ,実効性を持ち得ない.そして,「生活安全条例」を機軸とした自主防犯活動には,住民自身による権力的な視点からの自己監視というリスクが潜んでいる.このようなリスクは,遍在性を有しており,またその存在に気づきにくいという意味で「リスク社会」に特徴的なものと考えられる.