著者
加藤 直樹 安達 彰裕
出版者
公益社団法人日本オペレーションズ・リサーチ学会
雑誌
日本オペレーションズ リサーチ学会論文誌 (ISSN:04534514)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.390-406, 1989-09
被引用文献数
1

本論文ではスポーツの団体戦における勝敗決定方法として採用されている勝ち抜き戦及ぴせんめつ戦においてチームの勝利確率が選手の出場順序に依存しないための必要十分条件をある種の確率モデルの下で導く。本論文では選手1と選手2が引き分けの無い試合を行うとき、1と2それぞれが固有の「強さ」を表す非負の実数aとb(少なくとも一方は零でない)を持ち、1が2に勝つ確率がp(a、b)で与えられるものとする。この仮定の下でAチームとBチームが勝ち抜き戦またはせんめつ戦によって団体戦を行うとき、AチームがBチームに勝つ確率が、Aチーム及びBチームの選手の出場順序によらず一定であるための必要十分条件を示す。そして、その必要十分条件の下では、勝ち抜き戦で勝つ確率はせんめつ戦で勝つ確率と等しいことを示す。さらに、従来スポーツの勝敗の確率モデルとしてよく用いられてきたBradley-Terryモデル(すなわちp(a、b)=a/(a+b))はこの必要十分条件を満たすことを示す。最後に、関数p(a、b)に関するゆるい仮定の下で、その必要十分条件を満たすのは、p(a、b)=f(a)/(f(a)+f(b))に限ることを示す。ここでf(a)はf(0)=0を満たす任意の単調増加関数である。