著者
安達 未来
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.351-359, 2020-12-30 (Released:2021-01-16)
参考文献数
30
被引用文献数
5

これまでの研究で,他者を軽視する傾向が強いほど援助要請を回避しやすいことが示されているが,教師への学業的援助要請については十分な検討はなされていない。本研究では,仮想的有能感の高い生徒の特徴が教師への学業的援助要請にどのような影響を与えているのかを,拒絶感受性と孤独感の調整効果をふまえ,明らかにした。高校生173名を対象に,調査を実施した。仮想的有能感を他者軽視傾向で測定し,さらに自律的援助要請,依存的援助要請の2因子から構成される学業的援助要請を測定した。加えて,対人感受性尺度,対人疎外感尺度を用いてそれぞれ拒絶感受性と孤独感を測定した。その結果,仮想的有能感は,拒絶感受性が低い場合において,自律的援助要請に正の影響を与えていることがわかった。これは,仮想的有能感の高い生徒の拒絶に対する敏感さが自律的援助要請を回避させることを示唆する。また,仮想的有能感は,孤独感の高い場合において,自律的援助要請に正の影響を与えていた。孤独を感じることが対人的なコミュニケーションの一つとして,教師への自律的援助要請に結び付いた可能性がある。