著者
宋 明杰 阿部 康久
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.85, no.3, pp.214-235, 2012-05-01 (Released:2017-10-07)
参考文献数
40
被引用文献数
2

本稿では,中国の自動車メーカーにおける部品の発注方式の変化について明らかにした上で,このような変化がサプライヤーの選択や分布にどのような影響を与えたのかという点について検討した.調査対象として大手民営メーカーである吉利汽車の低価格車と中高級車を事例として分析を行った.中国メーカーの発注方式は,サプライヤー間の競争を促し,調達コストを下げるために複数のサプライヤーから調達する複社発注が一般的であった.これに対して吉利では,近年,開発・生産を始めた中高級車の場合,外資系(特に日系)完成車メーカーと同様に,各部品に対して一つのサプライヤーから部品を調達する一社発注を行う例が増加している.加えて,高い技術力を持つ大手サプライヤーから一次部品に近いものを一括発注する例が増えており,品質が向上した反面,調達コストは上昇している.サプライヤー分布を見ると,特に高付加価値部品については,省内の中小サプライヤーからの調達は減少し,長江デルタ内外にある外資系等の大手サプライヤーから調達するようになっており,サプライヤーの分布は広域化している.