著者
宗林 正人
出版者
関西病虫害研究会
雑誌
関西病虫害研究会報 (ISSN:03871002)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-7, 1959

大阪府下に於てモモアカアブラムシの二三の生態的観察を行つた. その結果の大要を示せば次の如くであつた.<BR>1. 無翅形は有翅形よりも産子数多く, 産子期間も長い.<BR>2. 有翅形も無翅形もその産子数は, 4月頃と10月下旬から11月には多く, タバコ, ゴマを食草としたものを除けば6~7月には減退した.<BR>3. 有翅形の大根への飛来消長は, 春 (4月上旬~6月中旬) と秋 (9月上旬~12月上旬) に最も多い. 更に春と秋にも各々2回の山がみられた. 大根の品種間に於ける飛来数の差異は著明ではないが, 聖護院, 美濃早生,宮重大根に多く, 時無大根には少い傾向がみられた. また成熟葉よりも生育初期の軟い葉に好んで飛来する.<BR>4. 有翅形の飛散は気象の影響をうけること多く, 豪雨を伴つた台風のあと, 降雨時, 降雨後には減少した.<BR>5. 有翅形は1日のうち早朝と16~18時に最も多数飛散し, 10~13時には極めて少く, 夜間は普通飛散しないが, 稀に電燈光に集るものもあつた.<BR>6. 春期に於ける有翅形飛来源植物はナタネ, カンランが最も主要なものであるが. 年によつてはモモにも多数の有翅形が現れた.<BR>7. 秋期に於ける有翅形飛来源植物としてゴマは最も主要で, 8月初めから有翅形が現れ, 8月中下旬がその最盛期であつた. 年により, またゴマの生育状態によつては, 有翅形は9月上旬にも相当多数現れた. ゴマは夏の寄主植物として最も好適なものである.<BR>8. 産雌虫は10月中頃から12月上旬まで現れるが, 11月上旬はその最盛期であり, 雄虫は11月初めから1月上旬まで現れ, 11月中旬が最盛期であつた.
著者
宗林 正人
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.38-44, 1960-03-30
被引用文献数
7

25属34種のアブラムシについて口針が植物組織にそう入される状態を観察した。その結果の果要は次のとおりである。<br>1) 口針を表皮組織にそう入する際,ほとんどすべての種類では,表皮細胞間または細胞内を貫通するが,あるものは気孔からそう入し,同一種でも一定しない。しかし,カンショワタアブラムシ<i>Ceratovacuna lanigera</i> ZEHNTNER(ススキ)およびマツノハアブラムシ<i>Schizolachnus orientalis</i> TAKAHASHI(アカマツ)の2種は常に気孔からのみそう入する。<br>2) 口針が植物組織内に進入するときには一般に細胞間を通るが,細胞内を貫通することもしばしばあり,結晶体を含む細胞も容易に貫通する。厚膜組織では細胞内を貫通することはまれで,細胞間のみを通るか,あるいはこの組織を避けて柔組織を通る場合が多い。しかしマツノハアブラムシ<i>Schizolachnus orientalis</i> TAKAHASHIでは,常にアカマツ針葉組織細胞内のみを貫通する。<br>3) 口針しょうは細胞間を通過する部分よりも細胞内を貫通した部分に顕著で,また表皮と口ふんの先端との間,あるいは葉しょうと茎との間の空気中にも形成される。口針しょうは口針内の気密を保つためにも役だつものと思われる。<br>4) 口針の先端はほとんど常にし部細胞内,特にし管内にそう入される。皮層細胞内にそう入されたものは見られなかったが,まれに木部あるいは管束しょうにそう入されていた個体も見られた。また口針はそう入部から最も近いし部に達するとはかぎらず,皮層を遠回りし,あるいは髄線を経て髄にはいりし部に達するもの,あるいはし部または木部のみを通過することがある。また口針はし部で同一細胞からのみ吸汁するものではなく,たびたび新しい細胞に刺し変えるため口針こん跡の分枝したものが多数みられた。
著者
宗林 正人
出版者
日本応用動物昆虫学会
雑誌
日本応用動物昆虫学会誌 (ISSN:00214914)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.38-44_2, 1960-03-30 (Released:2009-02-12)
参考文献数
15
被引用文献数
7 7

25属34種のアブラムシについて口針が植物組織にそう入される状態を観察した。その結果の果要は次のとおりである。1) 口針を表皮組織にそう入する際,ほとんどすべての種類では,表皮細胞間または細胞内を貫通するが,あるものは気孔からそう入し,同一種でも一定しない。しかし,カンショワタアブラムシCeratovacuna lanigera ZEHNTNER(ススキ)およびマツノハアブラムシSchizolachnus orientalis TAKAHASHI(アカマツ)の2種は常に気孔からのみそう入する。2) 口針が植物組織内に進入するときには一般に細胞間を通るが,細胞内を貫通することもしばしばあり,結晶体を含む細胞も容易に貫通する。厚膜組織では細胞内を貫通することはまれで,細胞間のみを通るか,あるいはこの組織を避けて柔組織を通る場合が多い。しかしマツノハアブラムシSchizolachnus orientalis TAKAHASHIでは,常にアカマツ針葉組織細胞内のみを貫通する。3) 口針しょうは細胞間を通過する部分よりも細胞内を貫通した部分に顕著で,また表皮と口ふんの先端との間,あるいは葉しょうと茎との間の空気中にも形成される。口針しょうは口針内の気密を保つためにも役だつものと思われる。4) 口針の先端はほとんど常にし部細胞内,特にし管内にそう入される。皮層細胞内にそう入されたものは見られなかったが,まれに木部あるいは管束しょうにそう入されていた個体も見られた。また口針はそう入部から最も近いし部に達するとはかぎらず,皮層を遠回りし,あるいは髄線を経て髄にはいりし部に達するもの,あるいはし部または木部のみを通過することがある。また口針はし部で同一細胞からのみ吸汁するものではなく,たびたび新しい細胞に刺し変えるため口針こん跡の分枝したものが多数みられた。
著者
宗林 正人
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲 (ISSN:09155805)
巻号頁・発行日
vol.30, no.4, pp.221-229, 1962-11-30

本種の生活環には完全生活環と不完全生活環の2型があり, 完全生活環ではウシコロシに産みつけられた卵は冬を越し, 3月下旬ふ化し, 4月中旬幹母の成虫が現われる.第2代はすべてはねを有し, タケ, ネザサなどの中間寄主に移住する.夏季高温時にも中間寄主上によく繁殖し, 多数のはねの無い胎生雌虫の世代をくり返し, 10月下旬にはねの有る産雌虫が現われてウシコロシに帰り両性雌を産下する.11月になれば雄虫が現われてウシコロシに帰り両性雌と交尾する.両性雌は11月中旬から産卵をはじめる.不完全生活環においては10月下旬から11月上旬中間寄主上に現われるはねの有る胎生雌虫は中間寄主の他の株に移り, はねの無い胎生雌虫を産下する.このはねの無い胎生雌虫は冬季低温時にも産子をつづけて冬を越す.ネザサに寄生した本種は常に葉の気孔からのみ口針をそう入し, ほとんど細胞内を貫通して進入し, その先端は細脈のし部のみにそう入されて平行脈にはそう入されない.このような事実はネザサの葉の構造, 特に気孔の分布, 表皮の角皮化, 平行脈および細脈の組織的差異と口針の長さなどに基因するものと思われる.