著者
室崎 将史 藤田 慎一 高橋 章 速水 洋 三浦 和彦
出版者
公益社団法人大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.41, no.6, pp.347-354, 2006-11-10
被引用文献数
5

静岡県と山梨県の県境に位置する富士山(標高3776m)を観測塔に見立て,高度の異なる20地点で2005年7月12日から7月20日までの9日間,パッシブサンプラーを用いてオゾン濃度の鉛直分布を測定した。山麓の都市部3地点(標高30m〜460m)と丹沢山頂(標高1540m)での自動計測器による測定データをもとに,オゾン濃度の時間変化についても解析を加えた。パッシブサンプラーによって観測期間に測定されたオゾンの平均濃度は,混合層内で約20ppbv,混合層より上層で約40ppbvであり,高度1500m付近を境にして大きな変化がみられた。濃度分布のパターンは,過去に報告された観測結果などと矛盾するものではなかった。自動計測器の観測結果から,富士山頂から水平距離が20km以内の山麓の都市部ではオゾン濃度の日変化は大きく,地域規模の大気汚染の影響を受けていることがわかった。一方,富士山頂から東に約30km離れた丹沢山頂では,夜間に富士山麓の都市部と同レベルまでオゾン濃度が低下することがあり,高度1500m付近でも気象条件によっては,地域規模の大気汚染の影響を受ける場合があることがわかった。このためほぼ同じ高度である富士山の中腹で観測されたオゾン濃度の大きな変化は,地域規模の大気汚染の影響によるものと推定された。