著者
早崎 将光 菅田 誠治 大原 利眞 若松 伸司 宮下 七重
出版者
公益社団法人大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.188-199, 2007-06-10
被引用文献数
5

2002年度は,日本国内の気象官署で観測された延べ黄砂日数が過去最高となった年であり,浮遊粒子状物質(SPM)の環境基準達成率はその前後の年度に比べて低い水準であった。本研究では,近年13年間(1992-2004年度)のSPM環境基準達成率の年々変動とそれに対する黄砂の影響評価をおこなった。年度別の環境基準は,以下の2条件を共に満たす場合に達成と判定される:(1)1日平均SPM濃度の2%除外値が閾値(100μgm^<-3>以下,(2)閾値を超過する高濃度日が連続しない。2002年4月には,顕著な黄砂が広域で観測された。SPM濃度の極大値はそれほど大きくないが(100〜200μgm^<-3>),4月8日から11日まで継続的に観測された。結果として,この大規模黄砂(2002年4月8-11日)が2002年度の環境基準達成率を約40%低下させていた。一方で,2001年度にも大規模な黄砂(2002年3月21,22日)が観測された。この黄砂は極めて高いSPM濃度(>500μgm^<-3>)をもたらしたが,およそ30時間程度で終結した。このため,2001年度の環境基準達成/非達成の地域区分は,黄砂の観測時間帯が日界を跨ぐか否かに依存していた。近年は,晩秋から初冬期におけるSPM高濃度日数が,1990年代と比べて著しく少ない。年間総計の高濃度日数が低下したことで,ただ一度の持続性黄砂のみで2002年度のSPM環境基準達成率が低い水準となったと考えられる。