著者
宮入小夜子
出版者
日本橋学館大学
雑誌
紀要 (ISSN:13480154)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.17-31, 2013-03-01

学生と社会人で「何のために働くのか」について対話を通して考える「ハタモク」のワークショップ(3時間)を2回実施し、事前、1回後、2回後の変化について、準実験的な方法による調査を行った。その結果、学生の社会人に対するイメージは、事前のネガティブなものが43.0%、ポジティブなものが18.5%だったのが、2回目終了時にはそれぞれ、24.6%と43.8%と逆転し、「実際に見た社会人」が大きな影響を与えている事がわかった。分散分析の結果、「職業進路成熟」「話し方」「特性的自己効力感」の各因子について調査時点の主効果が認められ、多重比較の結果、これらの各因子は事前の時点よりも1回後、および2回後の時点において有意に高かった。社会人との直接的な相互作用を通じて「気づき」を促進させるハタモクは、ポジティブな社会人イメージを形成し、自分の将来について考え、自分の言葉で話し、自信を持てるようになることが示唆された。大学のキャリア教育におけるプログラムとして、社会人との対話が学生の意識(社会人イメージ、キャリア成熟、対人スキルに関する自己認知、および特性的自己効力感)に影響を与え、学生たちの進路選択行動の遂行可能感を高めるのに有効であると考えられる。
著者
宮入 小夜子
出版者
学校法人 開智学園 開智国際大学
雑誌
日本橋学館大学紀要 (ISSN:13480154)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.15-27, 2011

本稿は、2009 年7 月に全国の1 万人以上の都道府県・市区町村を対象に行った「行政組織の組織風土改革に関する実態調査」(N=509)をもとに、どのような要因が行政組織の改革実現に寄与するのかについて、仮説モデルを提示することを目的とした。調査結果からは、行政組織の組織風土を規定する範囲としての組織の境界に対する認識が曖昧であることが示唆され、「地域」と「役所」の混同が見られた。行政組織においては組織風土改革を重視する割合は6 割程度に止まり、その内容も職員個人の意識改革を掲げているところが大多数であった。組織風土・職員意識改革に関連した質問項目のクロス集計から、(1)首長が組織風土・体質および職員意識の改革について重視し、マニフェストに明記している場合、総合計画や行政改革プランに組織風土・職員意識の改革に関する項目が明記される可能性が高まる。(2)首長のマニフェストに掲げられた改革ビジョンが計画に反映されることで、新たな制度の導入や、それに基づく行動を促進させる可能性が高まる。(3)総合計画や自治基本条例の中に行政組織(役所)としての理念やビジョンが明記されている場合、組織風土・職員意識改革に関する項目が総合計画等に明記され、コミュニケーションの機会を増やし、具体的な業務や行動の改革に繋げていく可能性を高める、といった仮説が導き出された。