著者
光根 美保 守永 里美 藤内 美保 宮内 信治 阿南 みと子 財前 博文
出版者
医学書院
雑誌
看護研究 (ISSN:00228370)
巻号頁・発行日
vol.48, no.5, pp.452-455, 2015-08-15

はじめに 超高齢社会を迎え医療ニーズが多様化するなかで,2025年に向けた在宅医療の推進が積極的に行なわれている。このようななか,地域医療を担う訪問看護ステーションにおける診療看護師(Nurse Practitioner;以下,NP)の役割は重要である。 筆者は訪問看護ステーションで活動しているが,在宅医,クリニックの医師はもちろん,介護支援事業者やヘルパーステーション,通所・入居施設,行政,ボランティア,NPO法人など,多くの組織と連携を強化することを心がけている。これは,個々の病態や生活スタイルに合った生活,また終末期を含めて,急変時・緊急時でも利用者・家族が安心して在宅療養ができること,そして生きる希望をもって日々暮らせるように,対象者と日々向き合う活動をめざしているからである。 2011年度から2014年度まで,厚労省の業務試行事業やプロトコール検証事業に参加し活動した。そのなかで,在宅療養者に新たな症状が出現したり,急な症状の悪化に対応することが少なくなかった。NPとしてその場で判断し,医師の包括指示のもとでタイムリーに特定の医行為を実施し素早く対応するとともに,対象者とその家族にそのつど丁寧に病態を説明することで,信頼関係が深まっていると実感する経験が何度もあった。 日々の訪問時に問診やフィジカルアセスメントを行ない,採血や画像データなどの検査所見を常に把握し,主治医に病状を報告したり,予測される病態を確認し身体状況を詳細に把握していることは,急変時の判断や対応に非常に役立つ。在宅療養を行なう対象者・家族が,急に状態が悪化した場合や終末期などの最も不安な場面で,タイムリーな対応や素早く問題解決に導くことが,在宅療養の継続につながると考える。 重症者や急変しやすい患者,さらに終末期患者においても在宅療養を行なえるように訪問看護を続けているが,在宅医療にかかわるNPの人数はまだ少ないため,訪問看護ステーションにおけるNPの活動によって何が変化し,どのような成果が出ているのか,十分に示せていない状況である。そこで今回,訪問看護関連報酬に注目し,当訪問看護ステーションにおけるNP導入前後の変化の実態調査を行なった。誌面の都合によりその一部を報告する。
著者
Chris GASTMANS 八尋 道子 宮内 信治 小西 恵美子
出版者
日本看護倫理学会
雑誌
日本看護倫理学会誌 (ISSN:24347361)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.59-70, 2022-03-20 (Released:2022-04-13)

過去20年間の看護倫理の文献をふりかえると、顕著なことが2つ認められます。1つは、データ収集を基本とする実証研究が非常に多いいっぽう、思考を基本とする議論研究がとても少ないことです。もう1つは、議論研究であっても、生命倫理の4原則に依拠する議論が支配的で、看護ケアの重要な側面への関心が相対的に薄いことです。この傾向は今後も続くのでしょうか。私の講演は、この問題提起から出発し、看護実践の核はケアであること、ケアは患者・家族・医療者等の人々が関わりあいながら進むプロセスであること、したがって看護倫理の基盤はケアに根差す必要があることを述べます。そしてその視点に立って、看護倫理の枠組みの基本を提示します。まず、看護ケアの重要な側面をなす次の3つを、看護倫理の枠組みの背景として位置付けます。すなわち、ケアに関係する人々(患者・家族・医療者等)が具体的に感じ・経験する「生きられた体験」、これら当時者が対話し解釈し理解を共有しあって患者本人のケアニードに対する適切な答えを見つけていく「対話的解釈的プロセス」、および、ケアする義務とよいケアを規定する「規範的基準」の3つです。その背景のもとに、倫理的な看護実践において常に配慮する必要のある主要概念として、「脆弱性」、「ケア」、「尊厳」の3つを特定します。この3つの概念に基づき、看護の倫理的な本質は、人間の「尊厳」を可能な限り維持、保護、促進するために、人間の「脆弱性」に対応する「ケア」を提供することである、と主張します。
著者
桐田 久美子 岡崎 寿子 八代 利香 宮内 信治 Gerald T. Shirley
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.55, no.6, pp.610-617, 2007-03-30
参考文献数
14

本研究では,臨床現場における看護師間のコミュニケーションの向上に寄与することを目的に,臨床現場における外来語・略語・隠語 (用語) の使用状況と,看護師の認識を明らかにし,困難な状況をもたらした用語を一冊の用語集として作成した。A県内の6つの病院の看護師計1,000名を対象に,独自に作成した自己記入式質問紙を用いたアンケート調査を行なった。また,特に意味が理解できず困難な状況をもたらした163の用語を抽出し,用語集にまとめた。回答者748名の97%が用語を使用するとし,理解できなった用語に遭遇した経験がある者は81.6%であった。そのうち,用語の使用により問題が発生したと回答した者は9.1%であり,「相手に伝わらなかった」,「処置が遅れた」等が理由としてあげられた。用語の必要性について「とても必要」,「必要」と回答した者は合わせて44.5%であった。理解困難な用語として回答数が多かったものは,「ステる」,「タキる」等であった。簡潔で素早く相手に伝えられる用語の使用は,看護業務を遂行する際に大きな役割を担っている一方で,医療事故の発生の危険性が内在していることが示された。また,生命に関わる重要な臨床現場で働く専門職者として,看護師一人一人が用語の正確な意味を理解し,適切に使用していくことの重要性が示唆された。