著者
森山 重治 宇高 徹総 宮出 喜生 清水 信義
出版者
特定非営利活動法人日本呼吸器外科学会
雑誌
日本呼吸器外科学会雑誌 (ISSN:09190945)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.80-86, 1994-01-15

症例は55歳,女性.咳嗽,労作時呼吸困難を主訴に近医で胸部異常陰影を指摘された.画像診断上前縦隔に腫瘍を認め,穿刺針生検で線維性胸膜中皮腫の診断を得た.24ヵ月前の検診時の胸部X線で右上縦隔に約3cm大の腫瘤を認めた.1992年4月22日胸骨正中切開で開胸.右縦隔胸膜と心嚢に強固に癒着しており,これを剥離して腫瘤を摘出した.腫瘤は重量545g,大きさ12.8×10.0×7.3cmで心嚢に癒着した部位に被膜欠損を認め,右腕頭静脈付近に一致する部位に茎が存在した.病理学的に腫瘍細胞に悪性所見は見られなかった.術後前縦隔に急速に再発し,同年7月15日再手術を施行した.腫瘤は心嚢内腔に浸潤しており,心嚢を合併切除した.再発腫瘤は重量160g,大きさ9.0×7.0×5.0cmであった.患者は再手術後約3ヵ月で心嚢内に腫瘤を形成し,心タンポナーデのため死亡した.縦隔内に有茎性に発育し,急速に増大発育した稀な症例であった.
著者
大谷 真二 清水 康廣 杉山 悟 宮出 喜生
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.66, no.8, pp.1960-1963, 2005
被引用文献数
9 7

症例は82歳,男性.腹部膨満,腹痛を主訴に外来受診した.頻回の開腹歴と問診から食餌性イレウスを疑い,入院後に保存的治療を開始した.腹部CT所見および腫瘍マーカーから肝転移を伴う進行大腸癌による腫瘍性イレウスと診断して手術を行った.手術所見では回盲弁付近の盲腸と肝彎曲のやや口側の上行結腸にそれぞれ4cm大の腫瘤を触れ, D2郭清を伴う結腸右半切除術を施行した.切除標本では上行結腸に全周性の腫瘍と盲腸に柿の種子5個を認めた.経過は良好で,術後26日目に退院となった.柿の種子はCTでは三日月状から楕円状の高吸収域として認めるが,本症例は柿の種子が誘因となって発症した大腸癌イレウスであった.本邦で食餌が原因となった腫瘍性イレウスの報告はほとんどされていないが,柿の種子もイレウスの原因となることがあり,詳細な問診とCTによる診断が有用であると考えられた.