著者
加藤 隆一 上原 央久 宮尾 則臣 萬谷 和香子 加藤 隆一 上原 央久 宮尾 則臣 萬谷 和香子
出版者
市立室蘭総合病院
雑誌
市立室蘭総合病院医誌 = Journal of Muroran City General Hospital (ISSN:02892774)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.34-39, 2016-09-30

当科では2009年4月から性機能専門外来を開設し、性機能障害の専門的診療を行ってきた。この度、2014年3月までの5年間の当院での性機能専門外来の現況をまとめた。受診者は計133名、年齢中央値は62歳であった。受診の動機は勃起障害(ED)が102名、加齢男性性腺機能低下症候群(LOH症候群:男性更年期障害)またはその精査が16名、ペロニー病など陰茎の問題が8名、射精障害が3名、男性不妊症またはその精査が3名、女性化乳房の精査が1名であった。EDを主訴に受診した患者102名の年齢中央値は63歳であった。初回治療内容はphosphodiesterase(PDE)5阻害剤が85名(83%)で、薬剤や用量は患者選択とした。初回投与の有効率は全体で49%、初回無効例のうち増量や異なるPDE5阻害剤などへの変更にて最終的に57%で有効だった。LOH症候群を主訴に受診した患者16名の年齢中央値は61歳であった。初回治療内容は男性ホルモン補充療法が6名で、そのうち4名(67%)が有効であった。陰茎の問題ではペロニー病が5名、そのうち2名が手術療法を受けた。射精障害は治療成功例がなかった。地方都市病院にも性機能専門外来には需要があり、意義があると思われた。
著者
塚本 泰司 三熊 直人 舛森 直哉 宮尾 則臣 伊藤 直樹
出版者
札幌医科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1996

‘老化'と前立腺肥大症の発生との関係の一端を解明するために、1)ヒト前立腺の加齢による形態変化、2)前立腺平滑筋の機能、3)前立腺上皮、間質細胞の増殖と抑制、について臨床的、生理学的および分子生物学的検討を行った。その結果以下の知見を得た。1) Community-based studyにおける検討により、加齢にともなう経直腸的超音波断層上の前立腺の形態は、一部の男子では50歳前後にかけて、それまで均一であった前立腺が結節を呈するようになり、これらのうちの一部の男子でさらに肥大結節が増大するという経過を辿ると推測された。したがって、臨床的な前立腺肥大出現のtumingpointは50歳にあると考えられた。2) 前立腺平滑筋細胞の培養細胞株をguinea-pig前立腺より確立した。この細胞は形態学的および機能的所見からも平滑筋細胞であり、今後のin vitroの実験モデルとして有用と考えられた。3) 前立腺平滑筋の加齢による機能的変化の検討から、8週齢の若年guinea-pigと比較すると12か月の高齢guinea-pigでは収縮張力の低下が認められ、加齢が前立腺平滑筋の機能に影響を及ぼす可能性が示唆された。4) 前立腺肥大症の一部には下部尿路閉塞に対する治療のみでは排尿障害を改善できないことがあり、膀胱平滑筋の機能を改善させる治療が必要であることが示された。5) 前立腺の上皮および間質細胞はandrogenおよび各種の成長因子regulationを受けているが、TGF-betaを中心とするこれらの間のネットワークの解明を試みた。今回の結果とこれまでの知見を総合すると、androgen存在下では増殖に作用する成長因子により上皮および間質の恒常性が保たれ、androgen低下時にはTGF-beta発現が亢進し上皮細胞はapoptosisにより減少する。一方、TGF-beta発現増加によりFGF産生が刺激され間質の増殖が起こる。これが加齢にともなう前立腺肥大の発生機序の一つと推測された。