著者
仲町 啓子 宮崎 法子 濱住 真有
出版者
実践女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

研究成果は『「仕女図」から「唐美人図」へ』と題した一冊の本(実践女子学園学術・教育研究叢書、2008年末刊行予定)にまとめられている。その本では下記のごとく、大きく日本編と中国編に分け、それぞれに論文を載せるとともに、本研究の中心となった日本編において、調査資料一覧(作品のデータベース)及び資料の性格や特徴などを簡潔に説いた解説文、代表的な作品の図版を載せている。中国側の資料も、関連する日本の箇所に合わせて掲載している。日本編の論文は、仲町啓子「日本における『唐美人』の絵画化とその意味」、山盛弥生「室町時代の女性半身像について-霊昭女図の制作と制作背景を中心に」、福田訓子「玄宗・楊貴妃図の研究-作品と文献から見た室町末から江戸初の展開を中心に」の3つである。それらでは、唐美人という表象が、単なる外国の女性像ではなく、すぐれて文化的な表象であったという問題意識を共有しつつ、受容史的な視点を入れてそれぞれの固有の場合について考察している。中国編の論文は、宮崎法子「中国の仕女図概観」、太田景子「中国道釈画中の女性像-京都国立博物館蔵『維摩居士像』を中心に」、皆川三知「『韓熈載夜宴図巻』の研究」で、中国の仕女図を概観するとともに、今回の研究で収集した日本に伝わった資料を活用しながら、それぞれのテーマに新知見を出している。日本編の調査資料一覧及び解説は、十四世紀以前の「唐美人」、室町期の絵画作品における中国風俗の女性像、玄宗・楊貴妃関係の図様の展開、桃山時代の「唐美人」、「探幽縮図」にみる「唐美人」、江戸期に描かれた「唐美人」、近代日本画における美人図-明治後期〜昭和初期を中心に、の各項目に分けて整理されている。また巻頭の図版は、楊貴妃・楚連香・西王母などのテーマごとに代表的な作品を集めて示し、さらに実践女子大学に所蔵する唐美人画巻を全巻載せている。以上により、「美人画」という表象(あるいは美人というモチーフ)が、ある特定の歴史的な社会のなかで有した意味について、日本絵画史においては、中国風俗の女性像である「唐美人」という表象が担ってきた文化的な価値あるいは社会的機能を、各時代の実情に沿いつつ考察し、中国絵画史においては女性像(仕女図など)の絵画化の歴史的な変遷とその意味を探った。
著者
宮崎 法子
出版者
実践女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

中国絵画において、人物画というジャンル自体が、時代によって重要度を大きく変化させたが、そのような基本的な問題について、特に、女性を画題にした、いわゆる美人画を軸に考察し、その変遷をまとめた。これについては、「女性の消えた世界」と題した論考を発表ずみである。さらに、美人画と総称される絵画がどのような系統の作品から成り立っているのかを歴史的に探り、宮女図や仕女図、また神仙の図などにさかのぼり得ることを明らかにした。そして、その過程で、職業画家、文人画家が、それぞれ特定の画法や技法と深く結びついていること、従って技法によって、人物画をいくつかの系統に分け得ることが明らかになり、それぞれについて、時代を追ってまとめた。一方、民間で、唐以来明清時代まで連綿と描かれ続けた寺観壁画を、中央の画家による人物画作品と関連づけ、総合的な考察を行うために、まず、説話的要素の大きい仏伝主題についてその変遷を、「中国の仏伝図…唐から明まで」にまとめ、その後山西省の遼・金・元・明の壁画遺品と、伝世の絵画作品を比較しつつ考察をすすめた。それによって、特に明代の宮廷画家や職業画家の主題や技法と、それら民間の作品のつながりを見いだすことが出来、それらを総合的に跡づける見通しを立てることが出来た。以上をこの2年間に得られた研究成果として、本報告書として提出する。また、そこで得られた見通しのもと、以前から手がけてきている寧波地方で制作された宋元仏画の研究成果をも参照させながら、より大きな視点から、中国人物画の多角的総合的研究を行うべく現在も継続中であり、今後いくつかの論文として逐次公刊する予定である。
著者
遠藤 克子 田中 治和 塩村 公子 宮崎 法子 渡部 剛士
出版者
東北福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1995

本研究の目的は、社会福祉士に必要とされるソーシャルワークの援助技術を効果的に教育する方法を開発することにある。我々が学部学生を教育してきた経験によれば、社会福祉援助技術現場実習は、学生の中で現場で体験するものと大学で学ぶものとがうまくつながることができれば、より効果をあげるものである。この「つながり」を促進するためには、学生・現場指導者・大学教員が、学生の現場での体験を表現し伝えあう為の、共通して使用できる道具が必要となる。したがって、本研究の最終的な狙いは、この「つながり」と「コミュニケーション」の為の道具を作り上げることになる。研究対象としては、特別養護老人ホームにおける実習を選択した。学生の実習記録に基づき、彼らが実習中に何をするかのカテゴリー化をまず行い、次に各カテゴリーにどのくらいの時間が使われたかを調べた。この研究の結果、学生の実習体験を述べるには少なくとも3次元の表現が必要であることがわかった。故に我々はモジュールという単位に着目し、これをもって学生の体験を整理することに決定した。実習現場の指導者の意見もこのモジュールの内容に反映するべく聴取された。モジュールの内容は以下のとおりである。(1)実習行動(介護、他機関との連絡・調整、行事・活動、オリエンテーション、相談援助、その他)x(2)学習対象(個人、家族、施設及びそのサービス、地域、制度、自己覚知、一般化、その他)x(3)学習の焦点(コミュニケーション、問題理解、援助計画、援助の実施、評価、記録)5事例を選びこの枠組みの妥当性を検証した。今後の研究の方向性としては、(1)モジュールの1単位ずつの内容をさらに検討すること、(2)モジュールという枠組みを実際に使用し、学生・現場指導者・大学教員からフィードバックを得てその適用性と効果を検証することである。