著者
中居 賢司 平野 三千代 伊藤 忠一 宮川 朋久 加藤 政孝
出版者
一般社団法人 日本不整脈心電学会
雑誌
心電図 (ISSN:02851660)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.173-179, 1988-04-30 (Released:2010-09-09)
参考文献数
11

ホルター心電図でST-Tを評価するために, (1) 限られた誘導数と胸部双極誘導に伴う問題, (2) 虚血性と非虚血性―特に体位性ST-T偏位の鑑別, (3) 24時間記録における意義と問題について検討した.ホルター心電図によるST-Tの評価として; (1) ST偏位は用いた誘導により異なり (CM5>CC5, m-II>m-aVF) , CM5誘導は不関電極の影響を受け新たなST偏位を生ずる可能性がある. (2) 体位性ST-T偏位の多くは瞬時に変化し, STトレンドグラムはBox型を呈する. (3) 虚血型ST偏位は60秒以上の経過を有し, STトレンドグラムはcrescendo-decrescendo型を呈する.ST偏位は用いた誘導および体位により異なる可能性があり, その規準化は難しい. (4) 虚血型ST偏位の判定および発生機序の評価には虚血時の心拍数の応答にも留意すべきである.今後, 記録方式を含め機器の改良, 誘導法の標準化が必要と考えられる.
著者
宮川 朋久 大浦 弘之 南澤 俊郎 小沢 正人 肥田 敏比古 市川 隆 三浦 秀悦 盛合 直樹 千葉 直樹 鎌田 潤也 安達 季之 荻生 直徳 千葉 誠 平盛 勝彦
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.25, no.10, pp.1208-1214, 1993-10-15 (Released:2013-05-24)
参考文献数
19

今回,房室ブロックに対して人工ペースメーカーの植え込みを行った後に,心室頻拍による意識消失発作を繰り返した1症例を経験した.症例は61歳,女性.平成2年3月15日に人工ペースメーカー(VVIモード,基本レート60/分)の植え込みを行った.同年5月6日に約5分間意識を消失した.心電図上自己調律ではII,III,aVF,V3-6でT波が陰性化しQT時間は0.56sec(QTc時間0.57sec)と延長していた.自己心拍が頻回にみられるため,基本レートを50/分に変更した.Holter心電図検査では心室性期外収縮後の自己心拍のQT延長とU波の増高およびpause-dependent QU延長があり,心室性期外収縮に対するセンシング不全がみられた.5月29日にも意識消失し,頻拍性不整脈またはてんかんを疑い,プロパフェノン450mg/日とフェニトイン300mg/日を投与した.8月15日,意識消失発作が出現した時のモニター心電図では,自己調律の後に心室性期外収縮のR on Tから多型性心室頻拍が発生した.心臓マッサージを施行し,心室頻拍は停止した.なおも心室性期外収縮が頻発したが,ペーシング頻度を70/分に増加させた後,心室性期外収縮は抑制され,心室頻拍も消失した.ペースメーカー植え込みに際しては,血行動態のみではなく植え込み後のペーシングレートに伴うQT時間の変化など詳しい分析を行うことが必要と考えられた.