著者
宮本 万里
出版者
国立民族学博物館
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010-04-01

現代ブータンは環境保護国として知られてきたが、近年の急速な民主化の動きは、君主制下での一元的で厳格な森林管理を環境保全成功の秘訣としてきたシステムを大きく変えつつある。本研究では、選挙や分権化をとおした民主化プロセスの中で、自然や生物の保護に対する村落社会の人々の価値体系がいかにゆらぎ、どのように再編されつつあるのか、その過程を現地での聞き取りと資料調査により明らかにした。特に、村落住民だけではなく森林局や畜産局、群議会、仏教僧、ボン教の呪術師を含めた複数のアクターによる日常的で多元的な交渉過程が、村落の価値体系と自然観を恒常的に書き換える様を動態的に描出し、環境研究に新たな一石を投じた。