- 著者
-
宮本 信宏
- 出版者
- 日本外科代謝栄養学会
- 雑誌
- 外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
- 巻号頁・発行日
- vol.56, no.2, pp.69-72, 2021-04-15 (Released:2022-05-15)
- 参考文献数
- 6
本邦では医療用漢方エキス製剤の普及から西洋医が漢方薬を処方する機会が増え, 西洋医学的エビデンスの蓄積が進んでいる. こうした背景から機能性消化管疾患診療ガイドラインにおいては六君子湯が一次治療に位置づけられ, 外科領域においても開腹術後の麻痺性イレウスに対して大建中湯, 慢性硬膜下血腫の再発予防には五苓散が使用されるのが一般化してきている. われわれは呼吸器外科術後のさまざまな症状に五苓散を中心とした利水剤を用いた経験から, 漢方薬は西洋薬と相補的に作用すると考えている. 利水とは西洋医学の利尿剤のような強制利尿ではなく「水毒」と呼ばれる水の分布異常を調整すると考えられており, 浮腫では利尿作用,脱水では抗利尿作用を発揮するとされている. 周術期は水分バランスがダイナミックに変化する局面であり, 浮腫の漢方薬が効きやすい状態である. 五苓散は副作用を心配することなく飲みやすく飲ませやすい漢方薬であり, 五苓散を中心とした利水剤による周術期管理を提案する.