著者
福嶋 裕造 塩田 敦子 多久島 康司 藤田 良介 戸田 稔子 船越 多恵 三明 淳一郎
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.70, no.3, pp.236-239, 2019 (Released:2020-02-05)
参考文献数
8
被引用文献数
1

ドケルバン病や手根管症候群は産後に多く起こる問題である。妊娠の影響でホルモンのバランスが崩れ腱鞘炎になりやすい上に出生児の世話で手をよく使うために症状が出やすいと考えられる。今回,出産後にこれらの症状を訴えた4例を報告する。症例は全例女性で,33歳から39歳であり,全例出産後に授乳を行っていた。診断はドケルバン病が1例,手根管症候群が2例,ドケルバン病と手根管症候群の合併が1例であった。全例に当帰芍薬散を投与した。全例に疼痛が軽快または消失して,手根管症候群の軽度のしびれは残存している。授乳中の治療中に使用できる薬剤は限られるが,当帰芍薬散は安全に使用できて有効な薬剤であると考えられた。
著者
福嶋 裕造 藤田 良介 能美 晶子 宮本 信宏 山本 了 實松 宏已 田頭 秀悟
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.43-47, 2021 (Released:2022-05-17)
参考文献数
10

整形外科の疼痛性疾患が天気によって症状が悪化する場合があり,これを気象痛という。今回,交通事故後の大後頭神経痛(GON:great occipital neuralgia)の2症例で天気による症状の悪化に対して五苓散が有効であったので報告する。症例1は41歳女性で,交通事故にて受傷し頚部痛と腰痛を訴えた。2ヵ月後より不定期に後頭部痛が発症した。3ヵ月目に大規模な台風がありその日の朝より激しい後頭部痛があり,その後も天気の悪化で後頭部痛が生じたため当院を受診した。気象痛の GON と診断し五苓散を投与して軽快した。症例2は31歳女性で,交通事故にて受傷し頚部痛を訴えた。受傷後3ヵ月後より天候の悪化により後頭部痛が悪化することが分かり,気象痛のGON と診断し五苓散を投与して軽快した。頚椎捻挫が原因である気象痛の GON に対して五苓散が著効した。
著者
福嶋 裕造 福嶋 寛子 藤田 良介 宮川 秀文 橋本 篤徳
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.71, no.3, pp.219-223, 2020 (Released:2021-09-28)
参考文献数
14

手指の指節間関節症にはヘバーデン結節およびブシャール結節が含まれる。ヘバーデン結節は手指の遠位指節間関節の変形性関節症であり,ブシャール結節は手指の近位指節間関節の変形性関節症である。今回,手指関節症に対して疎経活血湯を投与して急激な改善を認めた3症例を経験した。症例は全例女性である。症例1は58歳で主訴は左中指 DIP 関節痛でヘバーデン結節と診断した。症例2は60歳で主訴は左環指 DIP 関節痛でヘバーデン結節と診断した。症例3は37歳で主訴は右環指 PIP 関節痛でブシャール結節と診断した。全例に疎経活血湯エキスを投与し関節痛が改善した。疎経活血湯は軽症から中等度の骨関節脊椎の疼痛に対して,NSAIDs と同様に有用な可能性があると考えられた。
著者
福嶋 裕造 藤田 良介 上野 力敏 山下 和彦 内海 康生 清水 知己 戸田 稔子 大森 あさみ
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.35-41, 2019 (Released:2019-08-26)
参考文献数
29
被引用文献数
3

当院では整形外科領域の炎症を伴った症例について霊仙除痛飲の方意で越婢加朮湯と大黄牡丹皮湯を併用して治療を行っている。代表症例を提示して原文による文献的考察を行った。また,整形外科疾患に於いて非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs : non-steroidal anti-inflammatory drugs) が使用しにくいまたは無効であった症例に対しても同処方は有効であり,文献的考察を加えて報告する。
著者
福嶋 裕造 井藤 久雄 田頭 秀悟 栁原 茂人 中村 陽祐 藤田 良介 山下 和彦
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.35-41, 2018 (Released:2018-07-04)
参考文献数
15
被引用文献数
1

急性腰痛症に対して非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs, non-steroidal anti-inflammatory drugs)を用いたが効果が得られないため,大黄牡丹皮湯と四物湯を併用して用いて効果が得られた3症例を経験したので報告する。 症例1は86歳の男性で,症例2は56歳女性でありいずれも急性腰痛症と診断した。症例3は69歳男性で急性腰痛症,軽度の左根性坐骨神経痛と診断して治療した。全症例とも1から2週間の投薬で腰痛等の症状が軽快した。『万病回春』の調栄活絡湯の方意に準じて,大黄牡丹皮湯と四物湯を併用した。急性腰痛症に対する漢方治療において大黄牡丹皮湯と四物湯の併用による治療は有用であると考えられる。