- 著者
-
宮本 基杖
- 出版者
- 一般社団法人 日本森林学会
- 雑誌
- 日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
- 巻号頁・発行日
- vol.105, no.1, pp.27-43, 2023-01-20 (Released:2023-02-17)
- 参考文献数
- 106
熱帯林減少は地球規模の環境問題であると共に温室効果ガスの排出源でもあることから,森林減少を止める対策が国際的な取組として広く推進されている。しかし,その成果は当初の期待に及ばず,地域社会への影響など懸念の声もある。取組が難航する理由は適切な対策を選択できていないためであり,それは森林減少の根本原因が理解されていないことに関連する。本稿では,世界の先行研究と著者の東南アジアでの実証研究を基に,森林減少の原因について解明された全容を示し,発生と制御の仕組みを明らかにすると共に,持続可能な解決策を提案する。森林減少の直接原因は農業地代(農地収益性)の上昇に集約される。主要な根本原因は貧困であることが特定された。森林減少の発生と制御の仕組みは農業地代・貧困率・森林率の3要因で説明できる。現行の取組は農業地代を低下させる対策が中心であるが,それは効果が高いものの,コストと社会的影響を考慮しなければ持続性が低い。他方,貧困削減策は根本的解決の効果があり,持続性も高いことが実証されている。世界の森林減少対策は抜本的改革が求められており,対策の主軸を農業地代低下策から貧困削減策に移すことが肝要である。