- 著者
-
平野 悠一郎
- 出版者
- 一般社団法人 日本森林学会
- 雑誌
- 日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
- 巻号頁・発行日
- vol.105, no.3, pp.76-86, 2023-03-01 (Released:2023-03-29)
- 参考文献数
- 44
第二次世界大戦後の日本では,1950~70年代の各部門に跨る制度基盤の構築等を背景に,1980~90年代に森林内でもキャンプ場が次々に設置され,幅広い社会的承認に基づく森林利用としての地位が確立された。2000年代以降は,経済不況等を受けてキャンプ場経営が悪化し,その中から民間を中心とした再生の動きが見られてきた。この動きは,近年,キャンプ場を通じた森林利用を多様化させる方向性を示している。すなわち,森林内での教育・体験を掲げる組織キャンプ,滞在を主目的としたソロキャンプ,グランピング,ワーケーション,或いは,レジャーの充実等の利用者ニーズに対応した施設整備がなされてきた。また,この多様化の結果,キャンプ場運営を通じた様々な森林の有効活用と地域活性化への可能性が生まれている。各地のキャンプ場では,林地,立木,森林空間が活用され,利用者向けの薪生産が,森林管理・経営の担い手確保を含む地域の林業経営の再編・発展を促した事例も見られる。また,それらがもたらす雇用の確保に加え,利用者のニーズを地域の経済効果,交流・関係人口の増加,地域資源の総合的・持続的な利用に結びつける形で,地域活性化が促されつつある。