著者
奥田 裕規 井上 真 安村 直樹 立花 敏 山本 伸幸 久保山 裕史
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.37-42, 1998-10-01
被引用文献数
2

高度経済成長期以降,全国の山村において4割もの人口が若年層を中心に流出した。しかしながら,東北地方の人口減少は他の地方と比べ,比較的緩やかであった。これは,家の跡取りとして財産を引き継ぐ替わりに親の世話をするという「使命」を負わされ,その「使命」を果たすため,農業や出稼ぎをしたり,「国有林材生産協同組合」(以下,「国生協」という)等に勤務することにより山村に残り,または通勤圏内に仕事を見つけ,都市部からUターンしてきた人たちが35歳以上世代に多くいたからである。ところが,1990年以降,人口減少の程度が激しくなっている。この理由として,都市部に出た34歳以下の子供たちが,故郷に帰って財産を引き継がねばならないという「使命」から解き放たれ,故郷に帰ってきていないことがあげられる。山村が今後も維持されていくか否かは,この子供たちが山村に戻ってくるか否かにかかっている。アンケート調査によると,女性の子供たちに,故郷で親の世話をするべきだと考え,将来,故郷に帰るか否か迷っている傾向がみられる。このような子供たちが自ら望んで故郷に帰って来るために,どのような環境を整えればよいのか,今後,更に研究を進めていく必要がある。
著者
花本 沙希 立花 敏
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
vol.62, no.3, pp.49-58, 2016 (Released:2017-10-10)
参考文献数
20

国産材利用の拡大に向けて木造住宅をどのような消費者が選択するかを改めて把握する必要がある。大手住宅メーカーも木造住宅商品を扱うが,未だに木造住宅の供給には中小工務店が重要な位置を占める。本研究では,1980年頃より産直住宅供給業に取り組む中規模工務店を対象に聞き取り調査とアンケート調査を行い,産直住宅を選択した消費者の属性と拘りを明らかにすることを目的にした。方法としては,岐阜県加子母のN工務店で2007~2014年に木造住宅を新築した消費者61名からのアンケート調査結果をもとに,クラメールの連関係数を用いた相関分析と重回帰分析を用いて消費者の地域による差および住宅価格と消費者属性の差を分析した。アンケート調査結果として,①中部地域では土地所有があり世帯年収が高くない層による選択が多い,②関西地域では土地購入が多く平均的な広さの住宅を選択する,③関東地域では世帯年収の高い50歳代が多く高価な住宅を選択する傾向がある,④住宅については複数の拘りがあるが,住宅メーカーについての拘りは少ないことがわかった。重回帰分析からは⑤世帯年収1,500万円以上の消費者は建築する住宅価格が高くなることが明らかになった。
著者
大塚 生美 立花 敏 餅田 治之
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.41-50, 2008-07-01 (Released:2017-08-28)
参考文献数
9
被引用文献数
2

1980年代半ば以降アメリカでは,年金基金や職員組合の退職金基金などの巨大投資ファンドを背景とした林地投資経営組織(TIMO)や,不動産投資信託(REIT)等によって林産会社の社有林が買収され,これまで見られなかった新たな大規模森林所有が形成されている。この林業を巡るアメリカの新たな動きは,アメリカ固有の特徴的な動きであるというばかりでなく,林業経営の世界史的な流れの中で捉えるべき育林経営の新たな段階の到来を示唆しているのではないかと我々は考えている。本稿では,それを明らかにするため,(1)アメリカにおける大規模育林経営の収益性,(2)林地評価額の上昇による林地売却の有利性,(3)不動産投資信託に対する税の優遇措置,の3つの課題を考察した。その結果,育林経営の内部収益率は概ね6%であることから,米国債や銀行利回りより高いリターンが期待できること,林産会社の所有林は,長い間産業備林として所有されていたため,今日の実勢価格はそれよりはるかに高く,林地評価額の上昇がもたらした林地売却に有利性があること,REITの経営によって得られた収益に対しては,二重課税を回避するため支払配当控除ができる税の優遇措置があることがわかった。
著者
TAN JIAZE 道中 哲也 立花 敏
出版者
一般社団法人 日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.104, no.2, pp.74-81, 2022-04-01 (Released:2022-06-27)
参考文献数
48

世界の森林面積が減少を続ける中で,中国の森林面積は1980年代から一貫して増加している。本研究では,何がその原動力となったのかを社会経済要因に注目して明らかにする。森林資源と社会経済との関係性については多くの先行研究がある。この分野の研究に用いられる手法はパネルデータ分析を主にし,時系列データに対して単位根,共和分といった検定を行った研究蓄積は限定的である。そこで,本研究では中国の森林面積と社会経済要因に関する直近40年分の時系列データを用い,変数の定常性や共和分関係も考慮しながら自己回帰分布ラグモデルによる分析を行った。単位根検定の結果,すべての変数はI(0)過程またはI(1)過程であった。また,推定の結果,1人当たりGDP変化率は森林面積変化率に対して短期で正の影響を与えるが,長期では負の影響を与えること,農村人口変化率は短期でも長期でも負の影響を与えること,都市人口変化率と中国に対する海外直接投資については短期に正の影響を与えることがわかった。
著者
宮本 基杖 立花 敏
出版者
独立行政法人森林総合研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

木造住宅市場における消費者満足度と情報の関係について、住宅購入者と住宅供給者へのアン ケート調査(札幌市、つくば市)をもとに検討した結果、消費者が住宅に関する情報を十分に 持つことが、満足のいく住宅づくりにつながることを明らかにした。さらに、住宅購入におい て消費者が直面する情報の問題として、(1)限られた情報収集方法、(2)情報源の多くが住宅供 給者、(3)中立・客観的な情報の不足を指摘した。住宅市場の情報の問題を解消することが、住 宅満足度を向上させ住宅市場を活性化させる可能性を示した。
著者
田村 早苗 永田 信 立花 敏 大橋 邦夫
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.93-98, 1998-03-20
参考文献数
2
被引用文献数
4

1955〜95年の「国勢調査」産業別就業者数のデータを用いてコウホート分析を行なった。全産業と建設業はほぼ同様なコウホート分布を示し,農林漁業と全産業とは全く異なる分布形態を示した。55年以降の農林漁業における労働の中心的世代は1930〜40年生まれコウホートで,全産業に比べて高齢化が顕著である。また,世代交替が行われていないことも全産業との大きな相違であった。年令階層別に見ると,15〜19歳の純参入は急激に減少した。また,75〜80年と90〜95年にかけての2つの期間で50歳以下の幅広い年代で参入の超過が見られた。しかし,そのコウホート比は非常に小さく,この年齢層の参入超過が構造化するには至っていない。林業就業者の減少は55〜65年に集中していた。前半は25〜29歳を中心に退出が大きく,後半は広範な年齢層に広がった。高度成長期,まず若い人達が他産業から求められ,その後さらに多くの労働力が求められた様子が観察できた。将来的に広範な年齢層で減少が続けば林業就業者は1万2千人と推計される。しかし,中年層以下の参入超過が構造化すれば3万人と推計された。