著者
林田 紀和 前田 涼子 滝沢 義光 宮本 治子
出版者
社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析療法学会雑誌 (ISSN:09115889)
巻号頁・発行日
vol.25, no.11, pp.1247-1250, 1992-11-28 (Released:2010-03-16)

透析患者にとって, 便秘は隠された深刻な悩みの1つであり, 下剤を常用している患者は多い. 痔疾患は便秘が主因でくるために, 透析患者に多い合併症と思われるが, 今まで痔疾患についての報告は皆無であり, 当院での透析患者の痔疾患手術9例について検討した. 9例中男性5例, 女性4例であり, 内痔核8例, 痔瘻1例であった. 当院のこの2年間での健常者の痔疾患手術例は542例で, 63%は内痔核, 23%は痔瘻, 14%は裂肛であった. 従って透析患者では貧血や免疫能が低下しているに拘わらず, 予想に反して, 裂肛と痔瘻が少なくそめ考察を加えた. また手術例は透析導入後短期間であり, 痔疾の病悩期間はいずれも透析導入かなり以前より有し, 導入により増悪し易いが, 意外にも, 透析導入時に痔疾患がなければ, 便秘が頑固であっても, 痔疾患には罹患しづらいと思われる.
著者
坂本 千城 渡辺 武夫 坂本 洋子 宮本 治子 山岡 寿美子 三浦 治子 松村 一主功 松井 利充 中尾 実信 藤田 拓男
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.20, no.6, pp.485-490, 1983-11-30 (Released:2009-11-24)
参考文献数
11

閉経期後又は老年性骨粗鬆症の原因は複雑であり, 現代までに, 内分泌的, 栄養的, 物理的, 遺伝的等の諸因子が考えられたが, 免疫学的因子は未だ検討されていない. しかしながら, 骨粗鬆症が, 多くの膠原病や自己免疫疾患と同様に, 女性に多いこと, 又免疫異常の起り易い老年に多いこと, 自己免疫疾患として有名な慢性関節リウマチで, 関節周囲に骨粗鬆症様の変化が見られること, 更に骨粗鬆症では, 骨の吸収と形成してアンバランスが見られるが, 骨の吸収の主体である破骨細胞は, マクロファージ起源であるともいわれ, リンフォカインの一種であるOAFによって, その活性が刺激される等の現象は, 骨粗鬆症の原因の一つに, 免疫異常があることを, 疑わせるのに充分である.加齢とともに細胞免疫の一つの指標であるツベルクリン反応は陰性のものが多くなり, ことに骨粗鬆症を示すものでは, 示さないものよりも同年齢でも陰性者の率が高く, 又ツベルクリン陰性者は陽性者に比べて, 橈骨の鉱質合量が低下している. 末梢総リンパ球数及びTリンパ球数には, 骨粗鬆症患者と骨粗鬆症を有しないものの間に差はないが, OKT4/OKT8 (ヘルパー/サプレッサー) 比は, 骨粗鬆症患者では骨粗鬆症を有しないものに比べて, 高値を示す. 0.5μg/日の1α(OH)ビタミンD3を投与すると, 骨粗鬆症患者におけるツベルクリン反応は陽転するものが多く, 又, OKT4/OKT8比は低下する. これらの所見から, 骨粗鬆症にはある種の免疫異常, ことに細胞性免疫の低下が存在すると思われるが, その病態生理学的意義は, 今後の検討を要する.