著者
上田 功 松井 理直 田中 真一 野田 尚史 坂本 洋子 三浦 優生 安田 麗
出版者
名古屋外国語大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本年度の研究成果は大きく4つの領域に分けることができる。最初は音声産出の生理面である。松井は自閉症児に見られる外国語様アクセント症候群と呼ばれる障害に関して、ほぼ純粋にこの障害のみを引き起こしている言語障害者1名を対象に、その特徴と脳内機序に関するケーススタディを行った。行動レベルでは有アクセント語についてはほとんど誤りがなく、無アクセント語が有アクセント語に変異するというパターンが多くを占めること、またその時のアクセント核の位置が多くの場合に ディフォールトのアクセント位置 (後部から 2 モーラないし 3 モーラ目) に生じることが明らかとなった。続いて成人の外国語訛りとの平行性に関する研究領域で、野田は非母語日本語学習者の読解過程を調査し,どこをどのように読み誤るのか,わからない部分をどのように推測するのかを分析した。また,読解時に辞書を使用しても,適切な理解に至らないケースも分析した。このような読み誤りや辞書使用の問題点の中には,発達障害児に見られるものと共通するものもあると考えられる。田中は韓国語を母語とする日本語学習者の誤発音について、とくにリズム構造に焦点を当て分析した。韓国語話者が目標言語(日本語)における有標のリズム構造を極端に避けるのに対し、無標のリズム構造を過剰産出することを明らかにした。上記の分析結果をもとに、リズム構造の有標性と自閉症スペクトラム児のプロソディー産出との並行性について考察した。安田は日本人ドイツ語学習者の声帯振動制御に関して、音響的分析を前年度に引き続きおこなっている。次に三浦は語用論的側面に関して、小学生児童を対象にプロソディの特徴について、コーディングを行っている。最後に臨床応用面では、坂本がロボテクスの教育への導入が、学習不安の軽減に繋がる可能性を発見し、自閉症児の学習においてロボットを活用できる可能性を見いだしている。
著者
別府 哲 坂本 洋子
出版者
心理科学研究会
雑誌
心理科学 (ISSN:03883299)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.11-22, 2005

Previous researches suggested that many children with mild mental retardation became unable to attend school from the onset of puberty, because their negative self evaluation was growing stronger due to the ill treatment of surrounding people such as teachers, parents, and peers. Howerer, some studies revealed that they showed the negative self evaluation only about their academic self, but not about global self-esteem. This was a case study of a fourth grade boy with mild mental retardation, who could not go to school during the second term but was later able to do so, was analyzed from the viewpoint of the positive or negative self evaluation and the accuracy and stability of self perception. Until he began to go to school, he couldn't express both the negative and the positive self evaluation. Before that, his self evaluation was fluctuated and quickly changed according to the situation and to other's behavior. Also, his self perception was not accurate and stable. The role of significant others who effected the modification of his self perception and self evaluation was discussed.
著者
川原 淳子 石橋 通江 坂本 洋子
出版者
日本赤十字九州国際看護大学
雑誌
日本赤十字九州国際看護大学intramural research report (ISSN:13478877)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.134-146, 2005-03-01

本研究の目的は、看護学生が認知的煩雑性によって対人認知に関する偏見的判断を促進させるか否かを検証することである。方法は、看護大学生103名を対象に、精神障害者に対する対人認知についての調査用紙を作成し実験を行なった。実験内容は、認知負荷強度3条件および、精神障害者ラベル提示有無の6つの実験群を設定し、それらの条件間で、認知する人物に対する印象、認知する人物の行動予測、認知する人物に対する自己の行動意図について測定した。その結果は、実験における認知負荷操作の有効性は確認できたものの、仮説を支持する結果は得られなかった。看護学生の対人認知傾向として、認知する対象人物が精神障害者である場合は認知的煩雑性によってその人物によりポジティブな印象形成が促進され、その人物のよりポジティブな行動予測が促進される傾向にあると考えられた。また、認知する対象人物の印象とその人物の行動予測、その人物に対する自己の行動意図には、他に異なる認知過程があることが示唆された。
著者
坂本 千城 渡辺 武夫 坂本 洋子 宮本 治子 山岡 寿美子 三浦 治子 松村 一主功 松井 利充 中尾 実信 藤田 拓男
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.20, no.6, pp.485-490, 1983-11-30 (Released:2009-11-24)
参考文献数
11

閉経期後又は老年性骨粗鬆症の原因は複雑であり, 現代までに, 内分泌的, 栄養的, 物理的, 遺伝的等の諸因子が考えられたが, 免疫学的因子は未だ検討されていない. しかしながら, 骨粗鬆症が, 多くの膠原病や自己免疫疾患と同様に, 女性に多いこと, 又免疫異常の起り易い老年に多いこと, 自己免疫疾患として有名な慢性関節リウマチで, 関節周囲に骨粗鬆症様の変化が見られること, 更に骨粗鬆症では, 骨の吸収と形成してアンバランスが見られるが, 骨の吸収の主体である破骨細胞は, マクロファージ起源であるともいわれ, リンフォカインの一種であるOAFによって, その活性が刺激される等の現象は, 骨粗鬆症の原因の一つに, 免疫異常があることを, 疑わせるのに充分である.加齢とともに細胞免疫の一つの指標であるツベルクリン反応は陰性のものが多くなり, ことに骨粗鬆症を示すものでは, 示さないものよりも同年齢でも陰性者の率が高く, 又ツベルクリン陰性者は陽性者に比べて, 橈骨の鉱質合量が低下している. 末梢総リンパ球数及びTリンパ球数には, 骨粗鬆症患者と骨粗鬆症を有しないものの間に差はないが, OKT4/OKT8 (ヘルパー/サプレッサー) 比は, 骨粗鬆症患者では骨粗鬆症を有しないものに比べて, 高値を示す. 0.5μg/日の1α(OH)ビタミンD3を投与すると, 骨粗鬆症患者におけるツベルクリン反応は陽転するものが多く, 又, OKT4/OKT8比は低下する. これらの所見から, 骨粗鬆症にはある種の免疫異常, ことに細胞性免疫の低下が存在すると思われるが, その病態生理学的意義は, 今後の検討を要する.
著者
坂本 洋子 森本 淳子 藤野 ユリ子
出版者
日本赤十字九州国際看護大学
雑誌
日本赤十字九州国際看護大学intramural research report (ISSN:13478877)
巻号頁・発行日
no.4, pp.160-170, 2005

集中内観法の有効性に関する事例研究は多く見られるが、集団的に調査をした研究は非常に少なく思われる。そこで15ケ月間にM内観研修所を訪れた内観研修参加者のうち研究協力に同意の得られた265名を対象に調査研究を行った。研究の主たる目的は、参加者の参加動機、内観法実施の前後における感情や意識の変化の状況、内観過程中の辛かった時期やその時の感情や意識、気持の変化が現れたときの状況などを検討し、自己変容の心理的要因を明らかにすることにある。結果として、内観参加者は男女ほぼ同率、各年代による参加に大差はないが、やや20代女性が多く、60歳以上の参加は非常に少なかった。内観過程おいて、心理的身体的苦痛は90.2%の人にあり、2日目頃から起こり3日目がそのピークとなる。苦痛は、雑念が浮かんで内観の深まらない辛さが最も多く、他に内観実施に対する疑問、抵抗,被拘禁感、逃げ出したい気持、内観の進展に伴って起こる自分の醜さ、情けなさを知る辛さ等があった。しかし耐えて続けて実施することにより、後期には84.2%の人に心の変化が現れている。気持の安らぎ、自己覚知と他者理解、ものの見方、見え方の変化が現れ、終了後多くが、達成・成就感、清明感、自己肯定を得ることができていた。
著者
坂本 洋子 藤野 ユリ子 大塚 邦子 石橋 通江 森本 淳子
出版者
日本赤十字九州国際看護大学
雑誌
日本赤十字九州国際看護大学intramural research report (ISSN:13478877)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-9, 2006-12-22

人間関係論演習の一環として看護大学2 年生の希望者を対象に、構成的グループ・エンカウンターを4年間実施した。その結果、参加前後の気持ちや自己イメージの変化は、いずれも肯定的に変化していた。またオープナー・スケールも肯定的に有意に変化していたため、相手をリラックスさせ自己開示を促す能力が向上していることが示唆された。また、実施後3 ヶ月、1 年後にフォローアップ・アンケートを実施した結果、自己理解や他者理解の深まり、新しい人間関係の形成、自己課題の発見など実施直後と同様の結果が得られ効果の持続が示唆された。また、グループ体験が臨地実習やグループワークに活かされているという結果も得られた。今後の課題として、対象が多くなった場合、抵抗を感じる学生やエクササイズを消化すればよいと感じる学生が出てくることが考えられるため、エクササイズの工夫や適正なファシリテーターの指導方法の検討が必要である。