著者
宮澤 早紀
出版者
佛教大学総合研究所
雑誌
佛教大学総合研究所共同研究成果報告論文集 = Supplement to the bulletin of the Research Institute of Bukkyo University (ISSN:21896607)
巻号頁・発行日
no.6, pp.87-94, 2018-03

本稿では,伊豆諸島にある八丈島と青ヶ島の巫者が行う死者の口寄せの事例を報告している。八丈島と青ヶ島ではミコと呼ばれる女性の巫者が,死者の口寄せを行う。これが「ナカヒト」や「ナカシト」と呼ばれた。当該地域には,ミコ以外に男性の巫者が存在する。男性の巫者と女性の巫者が共に巫業を行っていた点が,八丈島と青ヶ島の巫俗の特徴である。巫者は住民の依頼に応じて,病気治しや生業や航海安全などの祈祷,ナカヒトを行った。こうした巫業を通して,近年まで巫者が住民の生活にかかわってきた。八丈島と青ヶ島では近年まで巫者以外の宗教者が日常生活に関与することが少なく,巫者が宗教行為にたいして総合的な役割を果たしたと考えられる。こうした巫者の役割の 1 つとして,ナカヒトがあったと考えられる。巫俗巫女口寄せナカヒト
著者
宮澤 早紀
出版者
佛教大学大学院
雑誌
佛教大学大学院紀要. 文学研究科篇 (ISSN:18833985)
巻号頁・発行日
no.48, pp.145-162, 2020-03-01

本研究では「現在」と向き合い、いまを生きる人々と民俗を記述することが民俗学に必要な視点であるという立場をとっている。これまで「過去」を起点とし、「現在」までの変化を分析する方法を用いてきた。しかし前提となる「過去」を設定し「現在」を分析することで、「現在」を固定化して理解してしまう危険性がある。こうした点を踏まえ、近年の民俗学研究の成果から「照合」という方法を用いた。これは「現在」を起点として「過去」にさかのぼり、いまを生きている人々が持つ「現在」と「過去」とのつながりを発見する方法である。本論文では東京都青ヶ島の巫俗に関わる人々の語りを分析し、人々がいかに「現在」と「過去」のつながりによって生きているのかを明らかにすることを目的としている。分析を通して、巫俗の時代変化による衰退という結論にとどまらない、巫俗に関わる人々の「現在」を支えるものが明らかになった。青ヶ島巫俗現在照合語り