著者
宮澤 靖
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.1065-1070, 2009 (Released:2009-10-20)
参考文献数
13
被引用文献数
3

近年、高齢者が増加し今後、日本は今までに経験をしたことがない高齢化社会を迎えようとしている。それに伴って、従来施行されてきた栄養サポートの理論が少しずつ変化してきている。特に高齢者の場合は、潜在的に生理機能が低下し栄養サポートでは極めて重要な「骨格筋」が減少して、器質性多疾患に陥っている患者が散見される。高齢者の栄養サポートのポイントは「動いて食べる」ことにつきるが、認知症の発症にて食行動の意欲が減少したり、長期臥床において十分な体動が得られない症例も少なくない。特に体動の少ない高齢者や長期臥床患者においてはエネルギー提供量の過不足による新たな問題も生じるため慎重に検討しなくてならない。本稿においては、高齢者の栄養学視点から見た特徴や従来、多くの施設で施行されているエネルギー必要量の算出式の問題点、身体計測等を概説する。
著者
宮澤 靖
出版者
公益社団法人 日本リハビリテーション医学会
雑誌
The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine (ISSN:18813526)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.121-126, 2017-02-18 (Released:2017-05-22)
参考文献数
7

経腸栄養法は,生理的な投与方法であり,経口摂取についで有用な栄養管理法である.近年は150種類を超える経腸栄養剤・濃厚流動食が上市され,疾患別での組成もラインナップされるようになった.また,投与に際するデバイス類も充実し,以前よりも患者によって快適に,確実に投与が可能となった.さらに手技に関しても正しい理解が広まり,合併症の低減や回避が可能になってきた.しかし,リハビリテーションの世界では,経腸栄養法に対して間違った認識やリハビリテーション施行中には投与をしてはいけないのではないかという誤解が散見される.今回は,リハビリテーションの観点から経腸栄養法の正しい認識と手技を概説する.
著者
柳樂 明佳 芦田 欣也 真壁 昇 宮澤 靖 富田 則明 秋山 和宏 川島 昭浩 金子 哲夫 山地 健人
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.711-716, 2012 (Released:2012-05-10)
参考文献数
16
被引用文献数
2

経管栄養時の胃食道逆流の発生に栄養剤の胃内滞留量が関与すると考えられている。そのため、本試験ではラットを用いて酸性半消化態流動食の胃排出を、類似の栄養組成をもつ中性半消化態流動食と比較評価した。流動食固形分の胃排出は中性半消化態流動食より酸性半消化態流動食の方が速かった。さらに、胃内容物の液相部分の胃排出には両者に差はなかったが、固相部分の胃排出は中性半消化態流動食より酸性半消化態流動食の方が速いことが示唆された。そこで各流動食の人工胃液消化試験を行ったところ、中性半消化態流動食では酸によるカード化のため、凝固物の形成が認められたのに対し酸性半消化態流動食では認められなかった。以上の結果から、酸性半消化態流動食は中性半消化態流動食と比較して胃排出が速く、その理由の一つとして、酸性半消化態流動食では中性半消化態流動食で観察される胃内でのカード形成が起こらないことが考えられた。
著者
宮澤 靖
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.975-980, 2014 (Released:2014-08-20)
参考文献数
16

高齢者が増え医療も高度化したことで、医療依存度の高い臓器不全の患者が増加している。このような患者は急速に栄養状態は悪化するのが特徴で、栄養とリハビリテーションのチーム医療が求められ、症例によってはその経口摂取が不可能であったり経口摂取そのものが患者にとって不利益になる症例も増加してきた。そのために経腸栄養法施行患者が増加し、長期管理の一つの方法として PEGによってより低侵襲に造設が可能になった。しかし、経腸栄養法は、経静脈栄養法に比して生理的であることが利点であるが「生理的であればあるほどトラブルは少ない」はずである。医療従事者のマンパワー不足や食材費最優先主義が横暴化してきて「人がいないから」という理由で加水バッグ製品の使用や1日1回ないし2回投与という非人道的な投与法を施行している施設がある。本来、経腸栄養法は「患者に対して生理的」な投与法であったが最近では「職員に整理的」なものになってしまっている。本来の正しい認識を我々も再確認して、胃瘻造設患者に対し安全で確実な栄養サポートを引き続き継続するためには、経腸栄養剤を正しく使用することが肝要である。