著者
芦田 欣也 中村 健太郎
出版者
日本外科代謝栄養学会
雑誌
外科と代謝・栄養 (ISSN:03895564)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.22-26, 2023-02-15 (Released:2023-03-15)
参考文献数
12

牛乳由来のホエイタンパク質は消化吸収が早く,分岐鎖アミノ酸などの必須アミノ酸を豊富に含むことから栄養学的に優れたタンパク質源である.近年,われわれはホエイタンパク質およびその加水分解ペプチドが抗炎症効果を有することを見い出した.そこでこのホエイタンパク質の栄養学的優位性と生体調節作用に着目し,ホエイペプチド配合流動食MHN‐02を開発し,その有用性をさまざまな病態モデルにより評価してきた.その中で,MHN‐02はインドメタシン誘発ラット小腸障害モデルにおいて,腸間膜リンパ節および肝臓へのバクテリアルトランスロケーションを抑制することを明らかにし,その効果はMHN‐02の小腸粘膜の保護作用が関連することを組織学的解析から示した.さらにこのような腸管保護作用を有するMHN‐02は抗がん剤5‐フルオロウラシルの副作用である下痢の発生を遅延させ,体重を維持することも明らかにした.以上のことからホエイペプチドを配合したMHN‐02は優れた栄養組成と腸管機能の維持を通して,各種病態において治療に伴う副作用を軽減し,栄養状態を維持することによって,治療効果の向上に貢献することが期待できる.
著者
柳樂 明佳 芦田 欣也 真壁 昇 宮澤 靖 富田 則明 秋山 和宏 川島 昭浩 金子 哲夫 山地 健人
出版者
日本静脈経腸栄養学会
雑誌
静脈経腸栄養 (ISSN:13444980)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.711-716, 2012 (Released:2012-05-10)
参考文献数
16
被引用文献数
2

経管栄養時の胃食道逆流の発生に栄養剤の胃内滞留量が関与すると考えられている。そのため、本試験ではラットを用いて酸性半消化態流動食の胃排出を、類似の栄養組成をもつ中性半消化態流動食と比較評価した。流動食固形分の胃排出は中性半消化態流動食より酸性半消化態流動食の方が速かった。さらに、胃内容物の液相部分の胃排出には両者に差はなかったが、固相部分の胃排出は中性半消化態流動食より酸性半消化態流動食の方が速いことが示唆された。そこで各流動食の人工胃液消化試験を行ったところ、中性半消化態流動食では酸によるカード化のため、凝固物の形成が認められたのに対し酸性半消化態流動食では認められなかった。以上の結果から、酸性半消化態流動食は中性半消化態流動食と比較して胃排出が速く、その理由の一つとして、酸性半消化態流動食では中性半消化態流動食で観察される胃内でのカード形成が起こらないことが考えられた。