著者
河野 恵三 宮田 聡美 新井 成之 有安 利夫 三皷 仁志 牛尾 慎平
雑誌
日本薬学会第140年会(京都)
巻号頁・発行日
2020-02-01

【目的】我々は昨年の本学会で、第3類医薬品「錠剤ルミン®A」の主要な有効成分NK-4が、マクロファージ(Mφ)様に分化させたTHP-1細胞に対して、M1 Mφマーカーの発現増強、TNF-α/IL-10産生比の増加やビーズの取り込み亢進など、貪食能の強いM1様Mφへ分極させることを報告した。今回、錠剤ルミン®Aの一般創傷に対する作用機序を明らかにするため、アポトーシス細胞の貪食(Efferocytosis)による炎症性M1様Mφから創傷治癒能の高い抗炎症性M2様Mφへの移行に及ぼすNK-4の効果について検討した。【方法と結果】①NK-4 (1-5 μM)によりM1様Mφへと分極したTHP-1細胞を、過酸化水素処理によりアポトーシスを誘導したJURKAT E6.1細胞(Apo-J)と、1 : 0.25~2の割合で混合し37℃で1時間共培養後にLPS (1 μg/ml)で刺激し、サイトカイン産生を調べた。その結果、NK-4濃度依存的且つApo-J細胞数依存的なTNF-α産生抑制と、対照では見られないIL-10産生の有意な増加が認められた。一方、TGF-β産生に影響は認められなかった。TNF-α/IL-10産生比でみると、細胞比1:1の場合、LPS単独刺激に対して対照では28.8 ± 9.7% (n=3)低下したのに対して、NK-4 (5 μM)処理では83.7 ± 8.7% (n=3)の低下が見られ、NK-4処理細胞で抗炎症性M2様Mφへの移行が促進していた。またNK-4処理細胞で対照よりも強いApo-Jの貪食が見られた。②Efferocytosisに重要なPhosphatidylserine とMφ上の受容体との結合をAnnexin Vで阻害すると、TNF-α産生抑制は完全に回復したが、IL-10産生増強には影響が見られなかった。③Cytochalasin DでApo-Jの貪食を阻害すると、IL-10産生増強作用のみが見られなくなったことから、IL-10産生増強作用はApo-Jを貪食することが重要であると考えられた。④Efferocytosisで活性化されるPI3K/Akt経路の関与を調べた結果、Western BlottingではNK-4処理細胞とApo-Jとの共培養によりAktの強いリン酸化が認められた。またWortmannin 処理ではNK-4処理細胞におけるTNF-α産生抑制は部分的に回復し、IL-10産生増強は完全に低下した。【考察】NK-4は創傷時にMφを貪食能の強いM1様Mφへと分極を促進すると共に、炎症の収束へ向けてEfferocytosisを高めて、炎症性M1様から抗炎症性M2様Mφへの移行を促進することで治癒を高めることが考えられた。またその作用機序としてPI3K/Akt経路の活性化の関与が示唆された。
著者
三好 経子 高須 博 宮田 聡子 矢口 厚 太田 幸則 勝岡 憲生
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.603-607, 1998-10-01 (Released:2010-10-15)
参考文献数
19
被引用文献数
1

46歳, 男性。骨髄線維症で北里大学医学部附属病院血液内科入院中に, 下腿に有痛性の隆起性紅斑が生じ同院皮膚科受診となった。初診時, 左下腿外側上方に拇指頭大で紅色の浸潤を有する結節性の紅斑が認められた。右下腿伸側から内側にかけては小児手拳大, 暗紅色の消退傾向にある浸潤性紅斑が認められた。その後も同様の紅斑が下腿や前腕などに出没した。無治療で経過観察していたところ, 初診から約1ヵ月半後に右下腿伸側に胡桃大, 暗紫紅色で軟らかな出血性の紅斑が再発し, その組織像では, 真皮中下層から脂肪織にかけて, 瀰漫性および巣状を呈する多数の好中球と出血が認められた。生検部位は直ちに難治性の潰瘍となったが, ステロイド剤の内服と局所処置の徹底により上皮化した。紅斑はその後も増悪·寛解を繰り返し, 皮膚病変と骨髄線維症の病勢とに相関があり, 自験例の紅斑は, 骨髄線維症に関連して生じたものと考えた。ステロイド治療の継続により皮膚病変はしばらく寛解期が継続していたが, 骨髄線維症の進行と肺炎の合併により死亡した。