著者
上田 誠也 木下 正高 上嶋 誠 歌田 久司 長尾 年恭 河野 芳輝 宮腰 潤一郎
出版者
東海大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1990

VANの達成のためには,いかに困難であっても,短基線観測の併用が不可欠であるとの認識のもとに,本研究では地の利を得た北陸地域と,前回研究での発展的継続をめざす伊豆大島での観測に主力を投入した.前者では各機関の協力により,VANシステムにほぼ同等の低ノイズ観測網が確率され,現在はいわば"地震待ち"の状態にある.しかし,設置された観測点が"sensitive station"であるという確率は高くはないので,今後努力を続けて"ツボ捜し"を行う必要がある.後者では伊豆大島に多数の測線を設置し,観測を続行しているが,期間中に出現した矩形状変化はその空間分布から判断して,NTT岡田局近辺での局地的変化(原因未不明)と思われるが,群発地震の前に出現頻度の増大した変化そのものについては今後もう一度および現象が起きるまでは検証不可能であり,これも,"地震待ち"の状況である.また本研究ではNTTのア-スと回線を全面的に利用して,世界でも初めてのNETWORK MT法を開発し,北海道東部において詳しい地下電気伝導度分布の推定に大きな成果をあげた.これはVAN法の基礎研究としてのみではなく,地球物理学一般にとっても画期的な貢献であった.VAN法成否の鍵が"sensitive station"の発見にかかっていることは明らかである.このためには,一見まわりくどいが事前にその地点の"sensitivity"を推定する方法を開発することが重要であろう.具体的にはすでにsensitiveとinsensitiveな場所の知られているギリシャにおいてVANグル-プと協力して総合的な地球物理,地質調査を行い,それらになんらかの地学的相違を見いだすための国際共同研究も進めたい.