著者
佐々木 愛 宮野 素子
出版者
秋田大学教育文化学部附属教育実践研究支援センター臨床心理相談室
雑誌
秋田大学臨床心理相談研究
巻号頁・発行日
no.18, pp.21-25, 2019-03-25

内的な感覚を他者が理解することは難しく,観察可能な行動に支援の焦点が当たりやすい。行動への対処は社会生活を送る上で重要だが,変容が難しい場合もある。行動の背景にある感覚処理を視野に入れると,本人の困り感に沿いながら支援ができ,認知や感情が影響を受けた結果,行動が変容しやすくするのではないか。そこで本研究では,認知,情動の2側面があり,社会適応に必要とされる共感性との関連を明らかにすることを目的とし,中学生を対象に質問紙調査を行った。結果,感覚有意・回避群,刺激探求群,低関心群の3群が得られた。3群それぞれで共感性について分散分析を行ったところ,共感的関心では低関心群のみ男子より女子の得点が高く,個人的苦痛では感覚有意・回避群が他の群よりも高くなった。今回の結果から,感覚回避の強さが個人的苦痛や共感的関心といった共感性の情動的側面へ影響すること,感覚探求が強いほど,他者指向的な感情を抱きやすいことが示唆された。