著者
中山 久之 稗圃 直史 福田 伸二 富永 由紀子 寺井 理治 根角 博久
出版者
長崎県農林技術開発センター
雑誌
長崎県農林技術開発センター研究報告 (ISSN:18848605)
巻号頁・発行日
no.1, pp.113-133, 2010-03

育種を行う上での基礎的データとするため、長崎県農林技術開発センターで保存するビワ遺伝資源49品種について、「植物遺伝資源特性調査マニュアル」に準じた調査を行い、それらの特性を明らかにした。特長的な形質をもつと考えられる品種は以下のとおりである。1.'ビッグジム'は果肉色が橙色を呈するため、カロテノイド高含有性育種母本として有用である。2.早熟性である'アドバンス'は、耐寒性も比較的強い可能性がある。施設栽培においては、'福江早生北'および'福江早生南'は早熟性育種母本として有用である。3.すべてのビワがんしゅ病グループ菌に対して抵抗性である'霞楼白蜜'はビワがんしゅ病の発生が確認されなったため、がんしゅ病抵抗性育種母本として有用である。'アッコ1'はビワがんしゅ病に対して、圃場抵抗性を有する可能性がある。4.良食味の'白沙'、'霞楼白蜜'および'倉田早生'は果実品質が優れ、良食味性育種母本として有用である。
著者
稗圃 直史 寺井 理治 福田 伸二 富永 由紀子 根角 博久 森田 昭 長門 潤 一瀬 至 佐藤 義彦 浅田 謙介 橋本 基之 中尾 敬 吉田 俊雄
出版者
長崎県果樹試験場
雑誌
長崎県果樹試験場研究報告
巻号頁・発行日
no.11, pp.1-15, 2008-12

長崎県果樹試験場では、1973年から農林水産省指定試験事業の「びわ育種指定試験地」としてビワの育種を開始し、2007年に早生種の'涼峰'を育成した。'涼峰'は1974年に'楠'に'茂木'を交雑して得た実生の中から選抜された。1996年から'ビワ長崎6号'としてビワ第2回系統適応性検定試験に供試し地域適応性を検討した結果、大果で食味の優れる早生種であることが確認され、2005年9月15日に'涼峰'と命名され「びわ農林5号」として登録された。また、種苗法に基づき2007年3月15日付けで登録番号第15019号として品種登録された。1)樹姿は直立と開張の中間で樹勢はやや強い。枝の発生はやや密である。満開期は年により変動するが概ね12月中旬で、'長崎早生'より遅く'茂木'より早い。ビワがんしゅ病には比較的強い。2)育成地の長崎県大村市における成熟期は5月下旬で、同じ早生品種の'長崎早生'と同時期である。3)果実の大きさは平均56.5gで、'長崎早生'や'茂木'よりも大きい。果形は短卵、果皮色は橙黄である。剥皮性は良好である。果汁の糖度は11.4%で'長崎早生'や'茂木'と同程度、また、酸含量は0.23g/100mlで両品種より若干低い傾向である。果肉は両品種と比べて軟らかく多汁で、食味は良好である。果皮障害ではへそ黒症および緑斑症は発生しにくいが、そばかす症が発生しやすく、裂果および紫斑症も発生する。