著者
鈴木 秀明 森 貴稔 大淵 豊明 寳地 信介 田畑 貴久 池嵜 祥司 橋田 光一
出版者
一般社団法人 日本耳科学会
雑誌
Otology Japan (ISSN:09172025)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.238-243, 2011 (Released:2013-05-24)
参考文献数
15
被引用文献数
2

突発性難聴に対するステロイド鼓室内注入療法 (IT) の効果を、高気圧酸素療法 (HBO) と比較して検討した。対象は治療開始までが30日以内で初診時聴力が40 dB以上の突発性難聴患者240例で、全例においてステロイド全身投与を行い、これに加えて174例に対しHBOを (HBO群)、66例に対しITを (IT群) 併用した。聴力回復の評価は、厚生省研究班の診断基準に基づいた治癒率、著効率、有効率、および聴力改善率、治療後聴力レベル、聴力利得の計6指標について行った。その結果、症例全体の有効率は、HBO群に比べてIT群で有意に高く (81.8% vs. 68.4%、p=0.039)、多重ロジスティック回帰分析でも同様の結果が確認された。めまい (-) の場合および治療開始までが7日以内の場合の有効率もIT群において有意に高かった。以上より、HBOと比較してITのほうが突発性難聴に対してより有効であることが示された。
著者
高橋 里沙 大淵 豊明 寳地 信介 竹内 頌子 大久保 淳一 池嵜 祥司 鈴木 秀明
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.116, no.7, pp.789-792, 2013-07-20 (Released:2013-09-14)
参考文献数
7
被引用文献数
1 5

閉塞性睡眠時無呼吸症候群 (OSAS) において, 鼻腔抵抗はその病態と密接に関与している. 今回われわれはOSASに対する鼻中隔矯正術および粘膜下下鼻甲介骨切除術の効果について検討した.対象は, 鼻中隔彎曲症と肥厚性鼻炎による鼻閉を伴い, 内視鏡下鼻中隔矯正術と両側粘膜下下鼻甲介骨切除術を施行したOSAS患者9例 (男性8例, 女性1例; 平均年齢53.2歳) である. 術前後に終夜睡眠ポリグラフ検査と鼻腔通気度検査を行い, (1)無呼吸・低呼吸指数 (AHI), (2)最長無呼吸時間, (3)平均無呼吸時間, (4)最低血中酸素飽和度, (5)平均血中酸素飽和度, (6)血中酸素飽和度低下指数, (7)覚醒反応指数, (8)睡眠時間に対するいびき時間の割合の8つの無呼吸指標, および(9)鼻腔通気度について比較検討した. その結果, 術前に比して術後に, AHIの有意な低下 (27.6±5.3/時 vs. 20.7±5.5/時; p=0.033), 平均血中酸素飽和度の有意な上昇 (95.1±0.7% vs. 96.0±0.7%; p=0.023), および覚醒反応指数の有意な低下 (30.5±3.3/時 vs. 21.2±5.3/時; p=0.028) が認められた. また, 鼻腔通気度V (P100) は吸気呼気ともに有意に改善した (吸気: 474.4±49.0cm3/s vs. 842.7±50.2cm3/s; p=0.002, 呼気: 467.3±57.3cm3/s vs. 866.0±80.6cm3/s; p=0.004). 他の項目については変化がなく, また術前後のbody mass indexにも変化はみられなかった. 以上より, 鼻中隔矯正術と両側粘膜下下鼻甲介骨切除術は, 鼻閉を伴うOSAS患者の睡眠時呼吸動態を改善させることが示された. このような鼻内手術の効果はOSASの治療に積極的に応用されるべきであると考えられた.