著者
笠松 章史 寳迫 巌
出版者
一般社団法人 電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会 通信ソサイエティマガジン (ISSN:21860661)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.176-182, 2018-12-01 (Released:2018-12-01)
参考文献数
30

大容量のデータを無線通信により簡単にやり取りしたいという要求の高まりを受けて,従来のマイクロ波やミリ波に続く新たな周波数帯としてテラヘルツ波を用いた無線通信の期待が高まっている.テラヘルツ波の特徴としては,従来にない広い周波数帯域幅を用いることができる可能性が挙げられる.テラヘルツ波を発生する手法としてはフォトニクス技術の応用が先行していたが,近年,電子デバイスによる300GHz 帯の研究開発が総務省のプロジェクト等により活発化し,InP(インジウムりん)系等の化合物半導体デバイス開発,シリコンCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor) 集積回路によるRF フロントエンド,300GHz 帯対応の進行波管増幅器の開発等が実施されている.これと並行して,国際電気通信連合無線通信部門(ITU-R) における周波数割当の検討や,IEEE802 での世界初の300GHz 帯無線通信規格の策定も行われている.本稿では,これらの動向について紹介する.
著者
寳迫 巌 石津 健太郎 東 充宏 加藤 明人
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 C (ISSN:13452827)
巻号頁・発行日
vol.J105-C, no.12, pp.342-350, 2022-12-01

2030年以降の未来社会は,高齢化や労働人口の他,感染症などの突発的な社会課題にも対応していくことが求められる.情報通信ネットワークは,その社会課題を解決するための基盤として高度化が期待されている.特にBeyond 5Gは,超高速・超低遅延・超多数接続などの特徴をもつほか,上空や海洋への通信エリア拡張,現実世界と仮想世界の融合など,もはや単なる移動通信のためのシステムではなく,移動通信分野以外のシステムとの積極的な連携を図ることにより,これまで困難と考えられてきた社会課題の解決や社会全体の最適化を期待されている.そのため,Beyond 5Gは異分野のシステムが連携できる柔軟な構成となる必要があり,オープンプラットホームとしてのBeyond 5Gを実現する観点からアーキテクチャ技術を確立する必要がある.一方で,テラヘルツ波通信は超高速通信や稠密なエリア展開などBeyond 5Gに最も特徴を与える技術の一つであり,周波数帯の特定など国際標準化における議論も進んでいる.そこで本論文では,多様な機能をオープンに取り込み,サービスに合わせて適材適所に組み合わせたシステム構成を可能にするBeyond 5Gアーキテクチャを提案し,Beyond 5Gにおけるテラヘルツ波通信の利用ケースに着目してケーススタディを行うことにより,アーキテクチャ技術の検証を行う.