著者
寺地 智弘 舟場 正幸 松井 徹
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.18-22, 2011

30種類の市販ネコ用ウェットフードの重金属〔ヒ素 (As)、カドミウム (Cd)、水銀 (Hg) ならびに鉛 (Pb)〕濃度を測定し、5 種類の市販ヒト用ツナ缶詰中のそれと比較した。Cd濃度はネコ用ウェットフードの方がヒト用ツナ缶詰よりも有意に高い値を示したが、それ以外の重金属濃度に違いはなかった。EUが定めた重金属濃度に対する基準値と比較したところ、13例の総合栄養食の内、As、Hgに関してそれぞれ9 例、1 例が基準値を上回った。一方、17例の栄養補完食では、13例がAsの基準値を上回り、Pbの基準値を上回ったフードも 1 例あった。また、日本国内における家畜配合飼料の基準値を上回ったフードは、As、Pbに関してそれぞれ5 例、1 例あった。ネコの体重を4 kg、フードのラベルに記載通りの給餌方法による摂食量を仮定し、ヒトにおける重金属の暫定耐容一週間摂取量(PTWI) と比較したところ、Asでは全てのフード、Cdでは 17例、Hgでは 25例およびPbでは 7 例が上回った。本研究結果は、ペットフードの重金属に関する基準値を設定する基礎データとなり得る。
著者
西浦 誠 寺地 智弘 舟場 正幸 松井 徹
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.15, no.Suppl, pp.Suppl_52-Suppl_53, 2012-07-01 (Released:2013-03-21)
参考文献数
2

ICP-MS の半定量測定モードを用いて、ペットフードのトキシコメタローム解析を試みた。ペットフード中金属の半定量測定では、極めて濃度の低い元素を除き繰り返し再現性が比較的高かった。Li・Al・V・Mn・Co・Cu・As・Rb・Sr・Mo・Cd・Hg・Pb の 13 元素に関しては、添加回収率が 70%~120% であった。これら 13 元素で定量分析値に対する強い回帰が認められた。したがって、同時にこれら多数の金属測定が可能であることが示された。よって、ICP-MS の半定量分析は、金属によるペットフード汚染を防止する上で有効なスクリーニング手法となりうる可能性が示された。
著者
寺地 智弘 岩田 法親 菱山 信也 舟場 正幸 松井 徹
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.7-11, 2015-04-10 (Released:2016-04-11)
参考文献数
21

ネコにおける被毛中水銀濃度と各種疾病の関係の予備的検討として、動物病院に来院した健常ネコ(n=33)と疾病ネコ(n=67)の被毛中水銀濃度を測定した。次いで、健常ネコの被毛中水銀濃度から暫定参照値上限を算出し、各種疾病のネコにおける被毛中水銀濃度との比較を行った。健常ネコの被毛中水銀濃度は0.2~6.4 mg/kgの範囲であった。得られた暫定参照値上限は9.2 mg/kgであり、健常ネコで暫定参照値上限を上回る個体は無かった。疾病ネコの被毛中水銀濃度は0.1~17.5 mg/kgの範囲であり、2頭の被毛中水銀濃度が暫定参照値上限を上回っていた。本試験では、ヒトやネコでの水銀中毒症として報告されている精神神経系疾患のネコが3頭、また、ヒトでの水銀中毒症として報告されている循環器系疾患のネコが3頭認められたが、いずれも暫定参照値上限を下回っていた。一方、口内炎と診断されたネコ4頭の内、2頭が暫定参照値上限を大きく上回っており、ネコにおける口内炎の一部が水銀過剰摂取と関連する可能性は否定できなかった。
著者
寺地 智弘 西浦 誠 舟場 正幸 松井 徹
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.13-17, 2013-04-10 (Released:2013-05-17)
参考文献数
7

ICP-MSの半定量測定モードを用いて、20種類の市販キャットフード(ドライフード:10、ウェットフード:10)の有害金属類の同時分析を試みた。健康被害リスクがあるとされる元素の内、Li·B·Al·Ti·V·Cr·Mn·Fe·Co·Ni·Cu·Zn·Ge·As·Se·Rb·Sr·Mo·Ag·Cd·Sn·Sb·Ba·W·Hg·Pb·Biの27元素を対象に、添加回収率、変動係数 (CV)、また、定量測定値との回帰を検討したところ、Li·Al·V·Mn·Co·Cu·As·Se·Rb·Sr·Mo·Cd·Sn·Hg·Pbの15元素で、ドライフード、ウェットフードともに、添加回収率が70%~120%、CVが10%以下であり、定量分析値に対する強い回帰 (r2>0.9) が認められた。また、B·Ti·Fe·Zn·Sb·Baの6元素は、添加回収率が70%以下あるいは120%以上であったものの、定量分析値に対する強い回帰が認められた。Cr·Ni·Geの3元素は、定量性は低い、あるいはキャットフードからはほとんど検出されなかったものの、National Research Council (NRC) の定める、げっ歯類における最大耐容量を添加したところ、添加回収率は82~120%であり、検出可能であった。ICP-MSを用いた半定量分析は、多様な有害金属類によるペットフード汚染を防止する上で有効なスクリーニング手法となりうる可能性が示された。
著者
寺地 智弘 舟場 正幸 土井 花織 湯浅 一之 松井 徹
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.80-84, 2012-10-10 (Released:2013-01-25)
参考文献数
15

ネコ被毛中水銀濃度測定法を検討した。ネコの頭部、頚部、背部、腹部および尾部の被毛をアセトンおよび界面活性剤で洗浄後、マイクロウェーブ分解装置を用いて密閉状態で高圧湿式灰化した。分解産物を純水で希釈し、誘導結合プラズマ質量分析装置 (ICP-MS) を用いて水銀濃度を定量測定した。認証標準物質であるヒト頭髪を用いた結果、日内変動係数 (CV) は1.9%、日間CVは3.0%、回収率は103%であり、測定下限は0.088 mg/kgであった。ウェットフード (乾物当たり水銀含量1.73 mg/kg)を給与されているネコ5頭の頭部、頚部、背部、腹部および尾部の被毛中水銀濃度を測定した結果、水銀濃度は背部が標準的な値であった。ついで、20頭のネコにウェットフード (乾物当たり水銀含量1.73 mg/kg) あるいは、ドライフード (乾物当たり水銀含量0.04 mg/kg) を28週間給与し、背部の被毛中水銀濃度を測定した。測定したサンプルは全て測定下限を上回っていた。ウェットフード群のネコの被毛中水銀濃度はドライフード群より有意に高い値を示した (p〈0.01)。本試験の結果、簡便かつ高感度でネコ被毛中水銀濃度の分析が可能であること、ならびに、ネコの被毛中水銀濃度は水銀摂取量をある程度反映することが示された。