著者
清水 いと世 舟場 正幸 松井 徹
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.99-113, 2017-10-10 (Released:2017-12-25)
参考文献数
47

維持期におけるイヌ用レシピを、飼い主へのアンケート調査(n=63)ならびにイヌの手作り食の成書(n=145)から収集した。日本食品標準成分表等を用いて各レシピの栄養素含量を算出し、AAFCO養分基準(2016)の最小値を上回る場合を充足とし、最大値を上回る場合を過剰とした。ほとんどのレシピにおいて、粗タンパク質と必須アミノ酸は充足していた。一方、カルシウム、カルシウムとリンの比、鉄、銅、亜鉛、ヨウ素、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、リボフラビン、ビタミンB12の不足しているレシピは多かった。また、一部のレシピではn-6とn-3系脂肪酸の比、カルシウム、リン、カルシウムとリンの比、ヨウ素、セレン、ビタミンAやビタミンDが過剰であった。AAFCO養分基準を満たすように手作り食を調製するには、上記の不足しやすい栄養素を多く含む食材を用い、過剰となりやすい栄養素を多く含む食材の使用量に注意する必要があることが示された。
著者
清水 いと世 舟場 正幸 松井 徹
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.19, no.Suppl, pp.suppl_32-suppl_33, 2016-06-30 (Released:2017-04-10)
参考文献数
3

アンケート調査により得たイヌの手作り食レシピと成書におけるイヌの手作り食レシピの食材と量より、食品成分表を用いて栄養素量を算出し、AAFCO養分基準(2016)の最小量及び最大量と比較した。8割以上のレシピがCa、Cu 、Zn、ビタミンAの最小量を下回り、一方ヨウ素やビタミンDの最大量を上回るレシピがあった。本試験の結果より、AAFCO養分基準を満たすように手作り食を調製する際には、上記の不足しがちな栄養素を多く含む食材を用い、過剰となりがちな栄養素を多く含む食材の量に配慮する必要があることが示された。
著者
五十嵐 悠 高田 知永子 茅沼 秀樹 金子 政弘 入来 常徳 菅沼 常徳 朝見 恭裕 舟場 正幸
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.10, no.Supplement, pp.9-10, 2007-07-11 (Released:2012-09-24)
参考文献数
3

Mg,CaおよびP含量の高いドライフードを成雄ネコに給与した時の尿路結石の形成を調べた。6ヶ月間,上記フードを給与しても尿路結石は認められなかった。その後,ミネラル含量ならびにbase excess値が低いドライフードを給与すると尿沈渣量ならびにストルバイト結晶数が顕著に減少した。したがって,フードのミネラル含量は尿沈渣量やストルバイト結晶の形成には影響を及ぼすものの,尿路結石形成の十分条件ではないと判断された。
著者
武本 智嗣 舟場 正幸 松井 徹
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.157-163, 2017 (Released:2017-08-25)
参考文献数
32

現代的な食生活は脂肪とスクロースの過剰摂取を特徴としており, 低いマグネシウム (Mg) 摂取量もしばしば認められている。本試験では, 脂肪およびスクロースの過剰摂取がMgの生体利用性に及ぼす影響を検討した。5週齢のWistar系雄ラットに, 対照飼料, 脂肪とスクロース過剰 (HFS) 飼料, Mg欠乏 (MD) 飼料, 脂肪とスクロース過剰およびMg欠乏 (HFS + MD) 飼料を4週間給与した。Mg欠乏飼料を給与したMD区およびHFS + MD区で典型的なMg欠乏症である皮膚の炎症が認められ, HFS + MD区ではMD区より早期に皮膚の炎症が生じた。MD区およびHFS + MD区で骨中Mg濃度が低下し, 骨中Mg濃度はMD区よりHFS + MD区で低かった。一方, Mgが充足している場合, 脂肪とスクロース過剰摂取は骨中Mg濃度に影響を及ぼさず, 皮膚の炎症も引き起こさなかった。以上の結果から, 脂肪およびスクロースの過剰摂取は, Mg充足時にはその栄養状態に影響しないが, Mg欠乏飼料給与時にはMg欠乏を増悪することが明らかになった。
著者
菅野 大 清水 いと世 舟場 正幸 松井 徹 友永 省三
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.22, no.Suppl, pp.suppl_33-suppl_34, 2019-06-30 (Released:2019-07-24)
参考文献数
2

市販されている維持期のネコ用総合栄養食(各10種のドライ製品とウェット製品)および5種の一般食(ウェット製品)におけるタウリンおよびメチオニンの充足・過剰を検証した。充足・過剰の判定はAAFCO養分基準(2016)に基づいて行った。総合栄養食では、すべてのフードにおいてタウリンとメチオニンは充足していたが、1つのウェット製品においてメチオニンが過剰であった。一般食では、タウリン不足のフードが認められ、メチオニンはほとんどのフードで過剰であった。メチオニン含量および表示されている(粗)タンパク質含量は正の相関を示したことから、メチオニンのアンバランスは生じないため、その過剰の問題はない可能性がある。総合栄養食であるドライ製品の一部を一般食に置きかえることを想定しても、タウリンは不足しないことが示唆された。
著者
寺地 智弘 舟場 正幸 松井 徹
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.18-22, 2011

30種類の市販ネコ用ウェットフードの重金属〔ヒ素 (As)、カドミウム (Cd)、水銀 (Hg) ならびに鉛 (Pb)〕濃度を測定し、5 種類の市販ヒト用ツナ缶詰中のそれと比較した。Cd濃度はネコ用ウェットフードの方がヒト用ツナ缶詰よりも有意に高い値を示したが、それ以外の重金属濃度に違いはなかった。EUが定めた重金属濃度に対する基準値と比較したところ、13例の総合栄養食の内、As、Hgに関してそれぞれ9 例、1 例が基準値を上回った。一方、17例の栄養補完食では、13例がAsの基準値を上回り、Pbの基準値を上回ったフードも 1 例あった。また、日本国内における家畜配合飼料の基準値を上回ったフードは、As、Pbに関してそれぞれ5 例、1 例あった。ネコの体重を4 kg、フードのラベルに記載通りの給餌方法による摂食量を仮定し、ヒトにおける重金属の暫定耐容一週間摂取量(PTWI) と比較したところ、Asでは全てのフード、Cdでは 17例、Hgでは 25例およびPbでは 7 例が上回った。本研究結果は、ペットフードの重金属に関する基準値を設定する基礎データとなり得る。
著者
西浦 誠 寺地 智弘 舟場 正幸 松井 徹
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.15, no.Suppl, pp.Suppl_52-Suppl_53, 2012-07-01 (Released:2013-03-21)
参考文献数
2

ICP-MS の半定量測定モードを用いて、ペットフードのトキシコメタローム解析を試みた。ペットフード中金属の半定量測定では、極めて濃度の低い元素を除き繰り返し再現性が比較的高かった。Li・Al・V・Mn・Co・Cu・As・Rb・Sr・Mo・Cd・Hg・Pb の 13 元素に関しては、添加回収率が 70%~120% であった。これら 13 元素で定量分析値に対する強い回帰が認められた。したがって、同時にこれら多数の金属測定が可能であることが示された。よって、ICP-MS の半定量分析は、金属によるペットフード汚染を防止する上で有効なスクリーニング手法となりうる可能性が示された。
著者
金森 耀平 村上 賢 松井 徹 舟場 正幸
出版者
日本微量栄養素学会
雑誌
微量栄養素研究 (ISSN:13462334)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.88-98, 2014-12-15 (Released:2022-12-28)
参考文献数
76

The liver-derived peptide hormone hepcidin is a master regulator of systemic iron homeostatis. Hepcidin binds to an iron exporter ferroportin expressing on the basolateral membrane of enterocytes and induces the internalization and degradation of ferroportin, leading to a decrease in intestinal iron absorption. Various stimuli such as body iron stores, inflammation, erythropoiesis, and hypoxia affect hepcidin expression through the transcriptional regulation. This mini-review summarizes current understandings on the factors affecting hepcidin expression.
著者
大島 義之 和田 沙依子 田村 充宏 後藤 健 金子 政弘 舟場 正幸 入来 常徳 波多野 義一 阿部 又信
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.64-73, 2003-04-10 (Released:2012-09-24)
参考文献数
34

ネコにおけるシスチンの尿酸性化効果と有害作用の有無について検討した。健康な成ネコ6頭(平均3.3kg)を2頭ずつ3群に分け,1期8日間の3×3ラテン方格法により,L-シスチンを0,2.4,4.8%添加した3種類の実験食を各群に割り当てた。実験期間を通して実験食と飲水は不断給与し,各期最終5日間に増体量,摂食量,飲水量,尿量,糞量を測定した。また,毎朝新鮮尿を採取し,直ちにpHとストルバイト結晶数を測定した.残りの尿はMg,P,尿素態N,アンモニア態N,クレアチニン,遊離アミノ酸濃度の測定に用い,[Mg2+]×[NH4+]×[PO43-]によりストルバイト活性積を求めた。一方,各期最終日には頚静脈より採血し,ヘマトクリットと血漿中の総蛋白質,尿素態N,アンモニア態N,クレアチニン,および遊離アミノ酸濃度を測定した。尿および血漿のクレアチニン濃度を指標として糸球体濾過量も求めた。その結果,L - シスチンには等S量のDL-Metに匹敵する尿酸性化効果がある一方,DL-Metのような強い毒性はないことが明らかとなった。しかし体重の有意な減少なしに摂食量が減少したことから,インバランスは生じ得ることが示唆された。L-シスチンの適正投与水準はドライフード当たり2.4%以下と考えられたが,この問題に関しては今後さらに検討の余地がある。L-シスチンの投与がシスチン尿症または同尿石症を増加させるとの証拠はなかったものの,二塩基性アミノ酸- 特にシスチン, リジン,アルギニンーの尿中排泄に関するネコの特異性が示唆された。
著者
清水 いと世 舟場 正幸 松井 徹
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.12-21, 2017-04-10 (Released:2017-05-02)
参考文献数
31

イヌや飼い主の都合により市販のフードが使用できない場合は、手作りによる食餌の調製が必要になるが、入手しやすい食材のみで手作り食を調製する場合、AAFCO養分基準(2015)における特に微量栄養素量の最小値を満たすためには、サプリメントの使用が不可避であった。しかしこの度、AAFCO養分基準(2016)が公表され、多くの微量栄養素量の最小値が減少したため、この新基準に即したレシピ設計を試みた。食材の栄養素量は日本食品標準成分表を主に用いた。通常の食材のみではカルシウムの最小値の充足には限界があるので、カルシウム源として期待できる鶏卵殻のミネラル分析を行った。糖質源とタンパク質源からなる食餌を基本食とし、とうもろこし油、豚レバー、煮干し、小麦胚芽、ひじき、鶏卵殻を補助食とした。糖質源とタンパク質源を湿重量で等量用い、基本食と補助食を代謝エネルギーで等量用いることで、AAFCO養分基準(2016)を満たすことができた。
著者
寺地 智弘 岩田 法親 菱山 信也 舟場 正幸 松井 徹
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.7-11, 2015-04-10 (Released:2016-04-11)
参考文献数
21

ネコにおける被毛中水銀濃度と各種疾病の関係の予備的検討として、動物病院に来院した健常ネコ(n=33)と疾病ネコ(n=67)の被毛中水銀濃度を測定した。次いで、健常ネコの被毛中水銀濃度から暫定参照値上限を算出し、各種疾病のネコにおける被毛中水銀濃度との比較を行った。健常ネコの被毛中水銀濃度は0.2~6.4 mg/kgの範囲であった。得られた暫定参照値上限は9.2 mg/kgであり、健常ネコで暫定参照値上限を上回る個体は無かった。疾病ネコの被毛中水銀濃度は0.1~17.5 mg/kgの範囲であり、2頭の被毛中水銀濃度が暫定参照値上限を上回っていた。本試験では、ヒトやネコでの水銀中毒症として報告されている精神神経系疾患のネコが3頭、また、ヒトでの水銀中毒症として報告されている循環器系疾患のネコが3頭認められたが、いずれも暫定参照値上限を下回っていた。一方、口内炎と診断されたネコ4頭の内、2頭が暫定参照値上限を大きく上回っており、ネコにおける口内炎の一部が水銀過剰摂取と関連する可能性は否定できなかった。
著者
西野 佳以 村上 賢 舟場 正幸
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.69, no.9, pp.517-523, 2016

ボルナ病(Borna disease)は,ヨーロッパ中東部において250年以上前から知られていた,馬や羊の神経症状を主徴とする疾患である。ボルナ病の病因は,ウイルス感染によるものであることが明らかにされ,原因ウイルスはボルナ病ウイルス(Borna disease virus: BDV)と命名された。その後,1996年にモノネガウイルス目にボルナウイルス科が新設され,2008年に鳥ボルナウイルス(Avian bornavirus)が分離されるまで,長らくBDVはボルナウイルス科を代表する唯一のウイルス種であった。近年,鳥類あるいは爬虫類からもボルナウイルス科に属するウイルスが多く分離されたことから,哺乳類ボルナウイルス,鳥類ボルナウイルス,及び爬虫類ボルナウイルスにウイルス種が細分類された。従来の典型的なBDVは哺乳類ボルナウイルスであるBorna disease virus-1(BoDV-1)に分類されている。
著者
鈴木 達也 後藤 健 舟場 正幸 入来 常徳 波多野 義一 阿部 又信
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.4, no.Supplement, pp.39-40, 2001-05-24 (Released:2012-09-24)
参考文献数
3

実験1(n=7)において,健康なネコに市販ドライフード(乾物中CP30%)を1日3時間だけ制限給餌した場合,不断給餌に比べて尿量は変わらなかったが排尿頻度(1日当たりの排尿回数)が減少した。給餌方法に関わらず日中の排尿は少なかったが,時間制限の場合は食後の尿pHが著しく上昇した。一方,不断給餌中は1日を通して尿pHは比較的安定していた。実験2(n=12)において,健康なネコに乾物当たりのCP含量が29%,50%および71%のドライフードを不断給与した結果,粗蛋白質含量の増加とともに排尿頻度および尿量が増加し,尿pHは低下した。
著者
鈴木 達也 内山 明 金子 政弘 山本 広美 舟場 正幸 入来 常徳 波多野 義一 阿部 又信
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.12-20, 2003-01-10 (Released:2012-09-24)
参考文献数
29

健康な成ネコにおいて食餌のCP含量および炭水化物(粗繊維とNFE)含量が,水分出納およびストルバイト尿石形成の難易に及ぼす影響について比較検討した。実験1(n=12)では乾物当たりのCP含量が29%,50%および71%のドライフードを不断給与し,CP含量の影響を評価した。その結果,CP含量の増加に伴って飲水量と尿量は増加し,尿pHは低下し,[Mg2+]×[NH4+]×[PO43-]つにより求められるストルバイト活性積の負の対数(pSAP)は増加した。一方,尿不溶性の塩酸不溶性画分はCP摂取量の増加とともに減少し,尿中ストルバイト結晶数は逆に減少した。実験2(n=9)ではCP摂取量が等しく炭水化物摂取量が異なる3区間で比較した。対照食は実験1のCP71%食と同じで,他の2種類はCP含量が乾物当たり52%の高デンプン食と高繊維食であった。各区のCP摂取量がほぼ等しくなるよう給与量を調整した結果,炭水化物摂取量は対照区より他の2区で2.5-3倍多かった。その結果,飲水量と尿量には区間で差が生じなかった。対照区と比較して高炭水化物区はpSAPが低下し,特に高デンプン区は尿pHが上昇した。加えて,尿不溶性の塩酸不溶性画分と尿中ストルバイト結晶数は高炭水化物区で増加または増加傾向を示した。以上により,蛋白質とは異なり食餌中の炭水化物は,健康な成ネコにおいてストルバイト尿石形成を促進する可能性が示唆された.
著者
鈴木 達也 牧 小伝太 後藤 健 舟場 正幸 入来 常徳 波多野 義一 阿部 又信
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.7-12, 2001-04-10 (Released:2012-09-24)
参考文献数
15

ネコに対する高蛋白食給与が尿中ストルバイト結晶数および尿不溶性成分濃度に及ぼす影響について検討した。健康な成ネコ8頭を用い,1期3週間のswitch-back法により実施した。実験食は粗蛋白質含量が乾物当たり29%(対照食)および55%(高蛋白食)の2種類のドライフードとした。高蛋白食給与により尿pHが低下する一方,飲水量には差がなかったにもかかわらず尿量が増加した。また,高蛋白食給与により尿中NH4+濃度は増加したものの,Mg2+ならびにPO43-濃度が低下したため,それらイオンの濃度積(ストルバイト活性積)は低下した。このことはストルバイトが結晶化しにくいことを意味し,実際,高蛋白食給与群では尿中ストルバイト結晶の濃度および日量が減少した。また,高蛋白食給与により尿の沈渣(総不溶性成分)の濃度は減少したが,その減少は尿沈渣中のHCl可溶性区分(無機成分)と同時にHCl不溶性区分(有機成分)の減少によるものであった。しかし,これらの成分は日量では減少しなかったため,尿中濃度の減少は尿量の増加によると考えられた。以上の結果は,健康ネコにおける高蛋白食給与はストルバイト尿石予防に有効であることを裏付けた。
著者
大石 亮 金子 政弘 入来 常徳 朝見 恭裕 舟場 正幸
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.9, no.Supplement, pp.15-16, 2006-07-13 (Released:2012-09-24)
参考文献数
5

成ネコと成イヌの尿成分を比較した。尿p H はイヌの方が高かった一方,尿浸透圧はネコの方が2 倍程度高かった。尿沈渣をSDS-PAGEにより電気泳動したところ,ネコではTHP様蛋白質の存在が明確に確認されたのに対して,イヌでは検出されなかった。尿中窒素化合物の排泄に関してネコとイヌの間に大差はなかった。
著者
阿部 又信 入来 常徳 舟場 正幸
出版者
Japanese Society of Animal Science
雑誌
日本畜産学会報 (ISSN:1346907X)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.60-65, 1992
被引用文献数
2

ホルスタイン種成雌牛延べ13頭を供試し,脂肪酸Ca塩(CSFA)の脂肪酸組成,粒度,ペレット加工,および給与量が酸分解エーテル抽出物(AEE)の消化率およびTDN含量に及ぼす影響について検討した.試験1,2ではいずれもパーム油を原料とし,約45%が2mm以上の大きさの不定形粒状CSFA(PFA-L)と,約85%が2mm以下の不定形粒状CSFA(PFA-S)のAEE消化率を求めた,いずれにおいても基礎飼料にCSFAを0または400g/日ずつ添加し,AEE消化率は400g給与時とOg給与時の糞中AEEの差をCSFA由来のAEE摂取量で除して求めた.その結果,PFA-LとPFA-SのAEE消化率はそれぞれ84.0および94.3%であった.同様にして,試験3ではPFA-Sを径5mmのペレットに加工した場合(PFA-SP)のAEE消化率を求めた結果,98.0%であった.試験4では,約39%が2mm以上の不定形粒状で牛脂を原料とするCSFA(TFA-L)を200または400g/日給与した場合のAEE消化率を求めた結果,それぞれ76.7および66.1%であった.供試CSFAのAEE含量と400g給与時の消化率からそれぞれのTDN含量を求めると,PFA-L;158,PFA-S;178,PFA-SP;179,TFA-L;126%となり,CSFAの粒度と脂肪酸組成はTDN含量に影響するが,ペレット加工しても負の影響はないことが示唆された.また,給与量も影響を及ぼしうるが,パーム油を原料とするCSFAの場合にはその影響は小さいと考えられた.
著者
寺地 智弘 西浦 誠 舟場 正幸 松井 徹
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.13-17, 2013-04-10 (Released:2013-05-17)
参考文献数
7

ICP-MSの半定量測定モードを用いて、20種類の市販キャットフード(ドライフード:10、ウェットフード:10)の有害金属類の同時分析を試みた。健康被害リスクがあるとされる元素の内、Li·B·Al·Ti·V·Cr·Mn·Fe·Co·Ni·Cu·Zn·Ge·As·Se·Rb·Sr·Mo·Ag·Cd·Sn·Sb·Ba·W·Hg·Pb·Biの27元素を対象に、添加回収率、変動係数 (CV)、また、定量測定値との回帰を検討したところ、Li·Al·V·Mn·Co·Cu·As·Se·Rb·Sr·Mo·Cd·Sn·Hg·Pbの15元素で、ドライフード、ウェットフードともに、添加回収率が70%~120%、CVが10%以下であり、定量分析値に対する強い回帰 (r2>0.9) が認められた。また、B·Ti·Fe·Zn·Sb·Baの6元素は、添加回収率が70%以下あるいは120%以上であったものの、定量分析値に対する強い回帰が認められた。Cr·Ni·Geの3元素は、定量性は低い、あるいはキャットフードからはほとんど検出されなかったものの、National Research Council (NRC) の定める、げっ歯類における最大耐容量を添加したところ、添加回収率は82~120%であり、検出可能であった。ICP-MSを用いた半定量分析は、多様な有害金属類によるペットフード汚染を防止する上で有効なスクリーニング手法となりうる可能性が示された。
著者
寺地 智弘 舟場 正幸 土井 花織 湯浅 一之 松井 徹
出版者
日本ペット栄養学会
雑誌
ペット栄養学会誌 (ISSN:13443763)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.80-84, 2012-10-10 (Released:2013-01-25)
参考文献数
15

ネコ被毛中水銀濃度測定法を検討した。ネコの頭部、頚部、背部、腹部および尾部の被毛をアセトンおよび界面活性剤で洗浄後、マイクロウェーブ分解装置を用いて密閉状態で高圧湿式灰化した。分解産物を純水で希釈し、誘導結合プラズマ質量分析装置 (ICP-MS) を用いて水銀濃度を定量測定した。認証標準物質であるヒト頭髪を用いた結果、日内変動係数 (CV) は1.9%、日間CVは3.0%、回収率は103%であり、測定下限は0.088 mg/kgであった。ウェットフード (乾物当たり水銀含量1.73 mg/kg)を給与されているネコ5頭の頭部、頚部、背部、腹部および尾部の被毛中水銀濃度を測定した結果、水銀濃度は背部が標準的な値であった。ついで、20頭のネコにウェットフード (乾物当たり水銀含量1.73 mg/kg) あるいは、ドライフード (乾物当たり水銀含量0.04 mg/kg) を28週間給与し、背部の被毛中水銀濃度を測定した。測定したサンプルは全て測定下限を上回っていた。ウェットフード群のネコの被毛中水銀濃度はドライフード群より有意に高い値を示した (p〈0.01)。本試験の結果、簡便かつ高感度でネコ被毛中水銀濃度の分析が可能であること、ならびに、ネコの被毛中水銀濃度は水銀摂取量をある程度反映することが示された。