- 著者
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寺居 剛
- 出版者
- 神戸大学
- 雑誌
- 特別研究員奨励費
- 巻号頁・発行日
- 2008
採用初年度から取り組んできた、高軌道傾斜角メインベルト小惑星のサイズ分布決定の成果をまとめた論文を日本天文学会欧文研究報告誌(PASJ)に投稿し、2010年12月23日に受理された。すばる望遠鏡を用いて取得された広域サーベイデータを解析し、直径1km前後の微小メインベルト小惑星候補616個を検出した。観測バイアスを除いたサンプルを、軌道傾斜角15度を境に2つのグループに分け、それぞれの累積サイズ分布を求めた。そのべき指数は低軌道傾斜角のグループで-1.79±0.05、高軌道傾斜角のグループで-1.62±0.07という値を示し、高軌道傾斜角の小惑星は傾斜の浅いサイズ分布を持つことが分かった。これは衝突速度によって小惑星の衝突破壊強度が異なるためだと考えられる。この結果から、高速度衝突が頻繁に起こったと考えられる惑星形成最終段階では、大きな小惑星ほど破壊されずに生き残りやすい環境であったと推測される。一方、UCLAのDavid Jewitt教授と共同で天王星型惑星の不規則衛星についての研究も行った。すばる望遠鏡のデータを使用し、不規則衛星3天体(Sycorax、Prospero、Nereid)の位相角変化に伴う光度変化を測定したところ、それぞれ0.03、0.14、0.18mag/degreeという値を得た。Sycoraxは木星トロヤ群天体や高軌道傾斜角のケンタウルス天体と、Prosperoは低軌道傾斜角のケンタウルス天体や高軌道傾斜角の外縁天体と、Nereidは低軌道傾斜角の外縁天体と類似していることが分かった。この結果は、Prosperoは天王星軌道に近い領域に位置していた天体を捕獲したのに対し、Sycoraxは木星軌道付近から外側に移動した天体を、Nereidは外縁部領域から運ばれた天体を捕獲した可能性を示唆している。