著者
北小路 博司 寺崎 豊博 本城 久司 小田原 良誠 浮村 理 小島 宗門 渡辺 泱
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.86, no.10, pp.1514-1519, 1995-10-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
4
被引用文献数
10 10

(背景と目的) 過活動性膀胱に対して鍼治療を行い, その有効性について検討した.(対象と方法) 対象は尿流動態検査にて過活動性膀胱を呈した症例11例 (男性9例, 女性2例) で, 年齢は51歳から82歳 (平均71歳) であった. 主訴は切迫性尿失禁9例, 尿意切迫2例であった. 全例に対して, 鍼治療前後に自覚症状を評価し, さらに尿流動態検査を施行して鍼の効果判定を行った. 鍼治療部位は, 左右の中りょう穴 (BL-3) であり, ディスポーザブルの鍼 (直径0.3mm) を50~60mm刺入し, 10分間手による回旋刺激を行った. 鍼治療の回数は4回から12回 (平均7回) であった.(結果) 自覚症状では, 切迫性尿失禁は9例中5例に著明改善 (尿失禁の消失), 2例に改善 (尿失禁回数および量の減少) を認め, 尿意切迫を主訴とした2例の排尿症状は正常化した. その結果, 自覚症状の改善率は82%であった. また, 治療前の尿流動態検査にて11例全例に認められた無抑制収縮は, 治療後6例で消失し, 治療前後の比較では, 最大膀胱容量と膀胱コンプライアンスに有意な増加が認められ, 尿流動態検査でも改善が認められた.(結論) 以上より, 中りょう穴を用いた鍼治療は, 過活動性膀胱にともなう切迫性尿失禁と尿意切迫に対して有用であった.