著者
早川 隆啓 三矢 英輔 小島 宗門 早瀬 喜正
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.93, no.3, pp.450-456, 2002-03-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
16
被引用文献数
1 1

(目的) 性感染症 (STD) としての男子尿道炎の臨床像について検討した.(対象・方法) 2000年1月より12月までの1年間に, STD性の男子尿道炎と診断した患者414例を対象に, 感染相手・感染経路・起因菌・淋菌の薬剤耐性や咽頭感染に対する認識などについて検討した.(結果) 年齢は16~60歳で平均31歳であった. 未婚者は305名 (73.7%) で, 感染相手は commercial sexual worker (以下CSW) が288名 (69.6%) であった. 感染経路は咽頭よりが199例 (48.1%), 膣からが42例 (10.1%), 両者が173例 (41.8%) であった. 起因菌は, 淋菌のみ206例 (49.8%), 淋菌, クラミジアの混合感染46例 (11.1%), クラミジアのみ47例 (11.3%), 非淋菌性非クラミジア性115例 (27.8%) であった. 淋菌の薬剤耐性はペニシリン耐性61例 (57.5%), ニューキノロン耐性22例 (20.8%), 耐性を認めなかったのが39例 (36.8%) であった. 咽頭感染の認識は, 301例中174例 (57.8%) はなかった.(結論) 男子尿道炎の蔓延の一因は, 咽頭感染の認識の低さと, 性行為におけるコンドームの非使用と考えられた. 広い年齢層に対して, 尿道炎の実態を啓蒙するとともに, 適切な薬剤選択についての検討が必要と思われる.
著者
北小路 博司 寺崎 豊博 本城 久司 小田原 良誠 浮村 理 小島 宗門 渡辺 泱
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.86, no.10, pp.1514-1519, 1995-10-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
4
被引用文献数
10 10

(背景と目的) 過活動性膀胱に対して鍼治療を行い, その有効性について検討した.(対象と方法) 対象は尿流動態検査にて過活動性膀胱を呈した症例11例 (男性9例, 女性2例) で, 年齢は51歳から82歳 (平均71歳) であった. 主訴は切迫性尿失禁9例, 尿意切迫2例であった. 全例に対して, 鍼治療前後に自覚症状を評価し, さらに尿流動態検査を施行して鍼の効果判定を行った. 鍼治療部位は, 左右の中りょう穴 (BL-3) であり, ディスポーザブルの鍼 (直径0.3mm) を50~60mm刺入し, 10分間手による回旋刺激を行った. 鍼治療の回数は4回から12回 (平均7回) であった.(結果) 自覚症状では, 切迫性尿失禁は9例中5例に著明改善 (尿失禁の消失), 2例に改善 (尿失禁回数および量の減少) を認め, 尿意切迫を主訴とした2例の排尿症状は正常化した. その結果, 自覚症状の改善率は82%であった. また, 治療前の尿流動態検査にて11例全例に認められた無抑制収縮は, 治療後6例で消失し, 治療前後の比較では, 最大膀胱容量と膀胱コンプライアンスに有意な増加が認められ, 尿流動態検査でも改善が認められた.(結論) 以上より, 中りょう穴を用いた鍼治療は, 過活動性膀胱にともなう切迫性尿失禁と尿意切迫に対して有用であった.
著者
本城 久司 北小路 博司 川喜田 健司 斎藤 雅人 浮村 理 小島 宗門 渡辺 泱 荒巻 駿三
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.89, no.7, pp.665-669, 1998-07-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
10
被引用文献数
2 4

(目的) 慢性期脊髄損傷患者の排尿筋過反射にともなった尿失禁に対する鍼治療の有用性について検討した.(対象と方法) 尿失禁を有する慢性期脊髄損傷患者の男性8名に鍼治療を施行した. 年齢は20~33歳 (平均27歳) であった. 損傷レベルは頚髄損傷4例・胸髄損傷4例であった. 全例ともウロダイナミクス検査により無抑制収縮が証明され, 排尿筋過反射と診断された. 鍼治療はステンレスディスポーザブル鍼 (直径0.3mm, 長さ60mm) を左右の第3後仙骨孔部 (BL-33) に刺入し, 10分間の手による半回旋刺激とした. 鍼治療は週1回の間隔で4回施行した. 鍼治療の効果について, ウロダイナミクス検査を治療直前, 初回治療直後および4回治療終了1週後に行って評価し, 臨床症状の変化は治療前と4回治療終了1週後で評価した.(結果) 鍼治療による副用はみられなかった. 8例のうち尿失禁が消失したものは3例であり, 他の3例に改善がみられた. 平均膀胱容量は治療前42.3±37.9mlであったのが, 治療終了1週後148.1±101.2mlと有意 (p<0. 05) に増大したが, 平均最大膀胱内圧には有意な変化はみられなかった.(結論) 慢性期脊髄損傷患者の排尿筋過反射にともなう尿失禁に対して鍼治療は有用であった.