著者
糸井川 栄一 寺木 彰浩 岩川 司
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.5, pp.209-220, 1995-11
被引用文献数
1

1. 研究の背景 1995年1月17日早朝に発生した阪神淡路大震災は、5000名を越える犠牲者、数十万といわれる被災世帯など、稀に見る規模の大惨事であった。その後、様々な対策が講じられてはいるものの、震災以前の状況に復するには未だ時間を有する状況である。特に、被災地域の大半は、高度に市街化が進んだ既成市街地であり、復興計画の策定にあたっては種類・量ともに莫大なデータを扱う必要がある。また事態は緊急性を有することから、短期間に高度な検討をおこなうことが要求されており、従来のような予作業を主体とした復興計画の検討をおこなうことは困難である。このために応急被災度判定など被災状況に関する情報、都市計画基礎調査など被災前の状況に関する情報など、多様な原情報から必要な情報を迅速に抽出し、効率的に利用できる体制を構築することが焦眉之急を要する事態となっている。 2. 研究の目的 本研究は、阪神・淡路大震災によって被災した主要都市(神戸市、芦屋市、西宮市、尼崎市、宝塚市、伊丹市、川西市)を対象として、市街地の状況(建物形状、道路線、水涯線、鉄道等の形状データ、建物用途、建築物の被災情報、および市街地の集団的属性情報(市街地指標)、更には社会的属性情報等)を地理情報システム上に構築し、被災状況の実態の把握ならびに被災状況と市街地指標の関連性について分析し、被災市街地の復旧・復興支援のために集計・分析結果の情報提供を行うシステムを構築することを目的としている。 3. 研究の概要 被災市街地の復旧・復興を情報の面から支援をするために、建設省建築研究所が神戸大学等と協力して開発しつつある「阪神・淡路大震災復興計画策定支援システム」の開発状況と、取り扱うデータおよびそれらのデータの問題点について整理する。そしてそれらのデータを地理情報システムとして統合するために用いた手法について述べる。また、このシステムを用いた現段階での被災状況に関する集計結果について報告する。さらに今回の主要な開発目的である復旧・復興のための情報支援ばかりでなく、GISの防災研究面への活用として地震学、耐震工学、都市防災等の各研究を有機的につなぐことや、これを応用して災害発生時にリアルタイムに各地の被害を予測し適時・適切・迅速な防災対応を講ずるための情報プラットフォームになることの可能性について論述する。
著者
糸井川 栄一 岩田 司 寺木 彰浩
出版者
地域安全学会
雑誌
地域安全学会論文報告集
巻号頁・発行日
no.6, pp.269-277, 1996-11
被引用文献数
3

1.研究の背景 兵庫県南部地震では、特に、被災状況の適時適切な把握が非常に困難な状況が見られ、的確な即時対応の点での難点や、広範な被災市街地を対象としているため、将来を見据えた都市の復興計画策定を立案する上で効果的に被災情報を整理することの困難性が指摘されており、今後の都市・建築防災対策の推進に際して教訓とすべきことが多く見られた。 2.研究の目的 地理情報システム(GIS)等の情報処理技術を活用して、大規模地震発生時にスムーズな被災状況把握と被災情報の的確な活用を図り、被災情報把握・提供・活用システムとして整備を行うことは、社会資本としての建築物の機能維持・強化や被災後の早期復旧を図るために早急に進めていかなければならない大きな課題である。そこで、本研究は"大規模地震発生時にスムーズな被災状況把握と被災情報の的確な活用を図るために必要なGISデータベース等の情報処理技術を活用した被災情報把握・提供・活用システム"を開発していくことにより、社会資本としての建築物の機能維持・強化や被災後の早期復旧を図るために必要なシステムの基礎的資料を得ることを目的としている。 3.研究の概要 前年度紹介した「阪神・淡路大震災復興計画策定支援システム」の構築に当たって遭遇した様々な顕著な問題点として、「建築物の被災度判定の調査は、たとえば応急危険度判定においては調査員が判定シートと住宅地図を携行し、判定シートで応急危険度判定を行い、その判定シートの番号を住宅地図に書き込むといった方法が採られ、この方法の後で地理情報システムに入力する際に、(1)判定シート番号は個人毎につけるので重複がある。(2)調査員は全国から来るので、土地勘がなく、住宅地図上での位置同定が不正確である。(3)調査現場が混乱しているので住宅地図の汚損が多い、(4)そのため、その後のディジタル化に当たって障害が多い。」等を指摘した。この問題点の多くを打開すべく、建築物の被災状況に関する情報を効率的に収集するために開発した「電子野帳」のプロタイプについて、その概念と機能について紹介する。