著者
新名 隆志 林 大悟 寺田 篤史
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.165-173, 2010-09-23 (Released:2017-04-27)
参考文献数
14

2009年7月13日に「臓器の移植に関する法律」が改正された。しかし、法改正に至るまでの国会審議には混乱があり議論が尽くされているとは言えず、その結果改正法にも、とりわけ第六条に関して疑問が残るものとなった。それゆえ本稿は、改正法やそれにまつわる議論の問題点を明らかにし、それに代わる臓器移植制度を構想する。一では、六条二項改正の問題を扱う。改正法が取り入れる「脳死は人の死」という考え方について、国会では説得力ある説明が提示されず、かえって問題点や不明瞭さを残す結果となったことを指摘する。二では、六条一項における臓器摘出の条件について、臓器提供の決定者に関する規定やそれに関する思想の変更等についての問題を提示する。三では、これまで無批判に前提され続けた善意(自発性・利他性)に基づく臓器提供に代わる制度の可能性として、互恵性に基づくオプトアウト型の相互保険的な臓器移植制度を提示する。