著者
鴨井 久博 小倉 喜一郎 佐藤 勉 丹羽 源男 鴨井 久一
出版者
Japanese Society for Oral Health
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.185-190, 2001-04-30 (Released:2017-12-08)
参考文献数
13

亜鉛(Zn)は必須微量元素の1つで,その摂取不良は成長遅延や免疫低下,味覚異常など多岐にわたる臨床症状を示すことが知られているが,Zn欠乏時の臨床症状の発現機構やZn代謝については不明な部分も多い。このため,本研究では口腔粘膜組織,おもに歯列組織周辺に対するZn欠乏の影響を調べる目的で,生後4週齢のWistar系雄性ラット12匹を対照群とZn欠乏群の2群に分け,特殊精製粉末飼料にて3週間飼育した。その結果,Zn欠乏群において体重増加は対照群に比べ緩やかであり,実験開始2週目ころより腹部,頸部などにおける脱毛がみられ,血清Zn濃度,血清ALP活性ともに価値であった。走査電子顕微鏡観察においては,Zn欠乏群に異物の蓄積や不規則な形態を呈した。また光学顕微鏡観察では今回の実験においてZn欠乏群に歯局組織の変化はみられなかったが,口蓋部における粘膜表層の角化や歯肉境移行部付近から頬粘膜にかけて錯角化が観察された。
著者
小倉 喜一郎
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.50, no.3, pp.341-350, 2000
参考文献数
28
被引用文献数
3

亜鉛(Zn)は必須微量元素の1つであり,生体内の数多くの酵素の構成成分として生理機能に重要な働きを示しており,その欠乏時には味覚異常や成長抑制などの障害を引き起こすことが知られている。本研究はWistar系雄性ラットを用いて,Zn欠乏飼料で4週間飼育し,Zn欠乏における味蕾細胞のターンオーバータイム延長および大腿骨に及ぼす影響を調べる目的で,舌微小血管構築の走査電子顕微鏡観察,大腿骨骨密度および機械的特性について検討した。それらの結果としてZn欠乏群ラットは,対照群に比べて食餌摂取量が減少し,体重増加が抑制されたことや,実験開始3週間頃よりZn欠乏の特徴とされる皮膚症状や立毛などの肉眼所見が観察された。また,血液生化学値に関しては対照群に比べ血清中Zn濃度および血清ALP活性が有意に低値であった。舌中Zn濃度については対照群に比べ有意に低値であり,大腿骨における骨長,骨密度および最大ひずみ,最大曲げ応力は,対照群に比べともに有意に低値であった。さらに,舌微小血管構築像の電子顕微鏡観察により舌微小血管の漏洩像が観察された。これらのことから,Zn欠乏による味覚異常は,味蕾細胞の栄養供給路である舌微小血管の障害が関連しており,かつ大腿骨骨密度の成長障害および骨密度の低下が認められた。これらからZn欠乏が舌乳頭の局部組織障害とともに硬組織への影響が無視できないことが示唆された。