著者
小原 倫子
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.92-102, 2005-04-20 (Released:2017-07-24)
被引用文献数
2

本研究の目的は, 母親の情動共感性と情緒応答性が, 育児困難感にどのように関連するのかについて検討することである。0歳児を持つ母親78名と1歳児を持つ母親40名を対象に, 育児困難感と情動共感性について質問紙調査を行った。また, 情緒応答性の把握について, 日本版IFEEL Picturesを実施した。日本版IFEEL Picturesとは, 30枚の乳児の表情写真を母親に呈示し, その写真を通して, 母親が乳児の感情をどう読み取るかという反応特徴から, 母親の情緒応答性を把握するツールである。その結果, 母親の情動共感性及び情緒応答性と, 育児困難感との関連は, 子どもの年齢により異なることが示された。0歳児を持つ母親の育児困難感には, 母親の情動共感性が関連しており, 1歳児を持つ母親の育児困難感には, 母親の情緒応答性が関連していることが示された。母親の育児困難感は, 母親としての経験を重ねるにつれて, 母親要因である情動共感性よりも, 母子相互作用から生じる情緒応答性が関連要因となる可能性が考えられた。
著者
島 義弘 上嶋 菜摘 小林 邦江 小原 倫子
出版者
一般社団法人 日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.36-43, 2012-03-20 (Released:2017-07-27)

母親は母子相互作用において,子どもへの関わりを決定する際に多様な情報を使用していることが示されている。本研究では,母親が使用する情報が母親自身の内的作業モデルによってどのように異なるのかを検討した。第1子が9ヶ月の母親29名を対象として,質問紙調査と自子以外の乳児が映った映像を刺激として用いた面接調査を実施した。質問紙では,"不安"と"回避"の2次元の内的作業モデルを測定した。映像刺激は3ヶ月児と9ヶ月児が映った15秒のビデオクリップ各5つであり,これらを視聴した後に何に着目して子どもへの関わりを決定するのかを尋ねた。母親の回答を「乳児の情動」「乳児の行動」「母親の主観性」「育児経験」「周囲の環境」の5カテゴリーに分類した上で,内的作業モデル("不安"と"回避"の2因子)を説明変数とした回帰分析を行ったところ,3ヶ月児のビデオクリップに対しては,"不安"が高いほど,また"回避"が低いほど「乳児の行動」への言及が多かった。一方,9月見のビデオクリップに対しては"不安"が高いほど「乳児の情動」への言及が多く,"回避"が高いほど「母親の主観性」に基づいた言及が多くなる傾向が認められた。以上の結果から,母親自身の内的作業モデルの違いによって母親が使用する情報は異なり,"不安"が高いほど乳児に起因した情報を多く使用し,"回避"が高いほど乳児に起因した情報から注意を背ける傾向があることが示された。
著者
小原 倫子
出版者
一般社団法人日本発達心理学会
雑誌
発達心理学研究 (ISSN:09159029)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.92-102, 2005-04-20
被引用文献数
3

本研究の目的は, 母親の情動共感性と情緒応答性が, 育児困難感にどのように関連するのかについて検討することである。0歳児を持つ母親78名と1歳児を持つ母親40名を対象に, 育児困難感と情動共感性について質問紙調査を行った。また, 情緒応答性の把握について, 日本版IFEEL Picturesを実施した。日本版IFEEL Picturesとは, 30枚の乳児の表情写真を母親に呈示し, その写真を通して, 母親が乳児の感情をどう読み取るかという反応特徴から, 母親の情緒応答性を把握するツールである。その結果, 母親の情動共感性及び情緒応答性と, 育児困難感との関連は, 子どもの年齢により異なることが示された。0歳児を持つ母親の育児困難感には, 母親の情動共感性が関連しており, 1歳児を持つ母親の育児困難感には, 母親の情緒応答性が関連していることが示された。母親の育児困難感は, 母親としての経験を重ねるにつれて, 母親要因である情動共感性よりも, 母子相互作用から生じる情緒応答性が関連要因となる可能性が考えられた。