著者
荒木 直幸 古田 貴音 小原 隆由 山内 直樹 執行 正義
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.230-235, 2003-05-15
被引用文献数
1 2

ワケギ5品種から構成される9系統(ウイルスフリー系統;広島1号〜広島9号)を用いて,16通りのプライマー組み合わせについて,AFLP分析を行い,品種・系統識別の可能性を検討した.ワケギのAFLP分析には,16通りのプライマー組み合わせのうち12通りが有効で,用いた9系統において総数678本のピークが観察された.ワケギ栽培系統を識別するために利用できる11種類のAFLPマーカー(総数の1.62%)が得られた.これらのマーカーの有無により,広島1号('下関')と広島2号('寒知らず'早生系)との識別は不可能であったが,他の系続開の識別は可能であった.ワケギの祖先種であるネギおよびシャロットを用いて,同じ12プライマー組み合わせに関する分析を行ったところ,ワケギ9系統から得られた総ピーク698本は,26.3%がネギに, 23.5%がシャロットにそれぞれ由来していると考えられた.さらに,11種類のワケギAFLPマーカーに関しては,5種類がネギに,3種類がシャロットにそれぞれ由来していることが推定された.これらの結果は,ネギとシャロットがワケギの祖先種であるとするこれまでの報告を支持するものであった.本研究で得られたAFLPマーカーは,ワケギ栽培系統の識別に利用可能で,異品種もしくは異系統の混同防止に役立つものと考えられる.
著者
坂田 好輝 杉山 充啓 小原 隆由 森下 昌三
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.135-140, 2006-03-15

台木品種がキュウリ穂木のうどんこ病抵抗性に及ぼす影響を明らかにするため,台木用品種そのもののうどんこ病抵抗性,また,抵抗性のレベルの異なる台木品種に接ぎ木されたキュウリ穂木の抵抗性について評価した.近年発表されたブルームレス台木'ときわパワーZ'および'ホワイトパワー'は,子葉から第10本葉に至るまで,20℃程度の冷温から26℃,加温ハウスレベルの適温条件まで,高いレベルのうどんこ病抵抗性を示した.PPMR-1は,成育が進むにつれ,高度な抵抗性を示した.従来から利用されているブルームレス台木'ひかりパワーG'及びブルーム台木の'新土佐'は罹病性であり,'ひかりパワーG'はより激しく罹病した.うどんこ病抵抗性が異なる台木を用いた場合にも接ぎ木されたキュウリ穂木の子葉の抵抗性には有意な差異はなく,幼苗期においては台木品種が抵抗性に及ぼす影響はないまたは小さいと考えられた.一方,接ぎ木キュウリの成育に伴い,PPMR-1あるいは'新土佐'に接ぎ木された穂木(第5本葉,あるいは17本葉)は,うどんこ病に対して抵抗性あるいは耐性を増した.うどんこ病に高度な抵抗性を有する'ときわパワーZ'および'ホワイトパワー'を台木に用いた場合には,キュウリ穂木が抵抗性になることはなかった.ブルームレス台木の'ひかりパワーG'は穂木の抵抗性を弱めた.これらの結果から,台木品種は穂木のうどんこ病に対する抵抗性または耐性を変え,PPMR-1のような抵抗性または耐性を付与することのできるカボチャ台木品種を利用することにより,うどんこ病被害を軽減できることが示唆された.
著者
山下 謙一郎 若生 忠幸 小原 隆由 塚崎 光 小島 昭夫
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.74, no.6, pp.444-450, 2005-11-15
参考文献数
27

ネギのさび病抵抗性を改良するため, '聖冬一本', '岩井2号', '長寿', 'せなみ', '冬扇一本', '豊川太'の6品種を育種素材(C_0)として循環選抜を行った.循環選抜の1サイクルは2段階からなり, 最初の年に自殖および自殖系統選抜を行い, 2年目に相互交配および母系系統選抜を行った.2サイクルの循環選抜により, 10母系系統からなる改良集団(C_2)を得た.さらに, 2世代の自殖と自殖系統選抜を行い, 13のC_2S_2系統を得た.実施した循環選抜の効果を評価するために, 2回の接種検定により上記の選抜で得られた全世代のさび病抵抗性の程度を比較した.春季および秋季の接種検定において, 発病程度の指標であるarea under the disease progress curve (AUDPC)の値は循環選抜が進むにともない明らかに減少し, 抵抗性の向上が認められた.C_1からC_2世代にかけて抵抗性の変化は小さかったものの, C_2S_2世代では大幅な向上が認められ, C_2S_2系統のAUDPCは素材品種の約38%となった.以上の結果, ネギのさび病抵抗性の改良に循環選抜は有効であることが実証された.