著者
山内 直樹 南出 隆久
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.265-271, 1985
被引用文献数
10 30

本研究は, パセリーにおけるペルオキシダーゼによるクロロフィルの分解について追究した. パセリー葉身のエタノール抽出物にペルオキシダーゼ並びに過酸化水素を添加すると, クロロフィルの分解が認められた. しかしながら, 精製したクロロフィルはペルオキシダーゼ•過酸化水素系で分解されなかった. この結果から, パセリーのエタノール抽出物中に含有される未知物質がペルオキシダーゼ•過酸化水素系によって酸化され, その酸化生成物がクロロフィルを分解しているものと思われたので, 以下未知物質の検討を行った.<br>未知物質は溶媒分画並びにカラムクロマトグラフィーによって分離され, 紫外部吸収極大位置からアピゲニン配糖体であると推定した. さらに, 塩酸による加水分解によりアグリコンを抽出し, 薄層クロマトグラフィーでのRf値並びにスペクトル特性の検討により, 未知物質はパセリーの主要フラボノイドのアピゲニンであることを同定した.<br>以上の結果から, パセリーにおけるクロロフィルの分解は, ペルオキシダーゼがアピゲニンを酸化し, 生成したアピゲニンの酸化物がクロロフィルを分解することを認め, 収穫後におけるパセリーの黄化にペルオキシダーゼが関与しているものと推察した.
著者
生野 世方子 吉村 美紀 山内 直樹
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
調理科学 (ISSN:09105360)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.299-303, 1993-11-20
被引用文献数
2

真空調理中の成分変化を明らかにするため、大根を用い、真空度(30、100Torr)と加熱温度(65、70、80、100℃)の成分に及ぼす影響について検討した。1)加熱温度による硬さの経時変化をみたところ、70℃、80℃、100℃と温度が高くなるほど早く軟化した。65℃加熱では軟化するが、70℃以上と同じ程度までは軟らかくならなかった。2)加熱後の外観は、100℃、80℃において、いずれの真空度でも良好であったが、70℃加熱の100Torr及び常圧試料では褐変が生じた。3)硬さについてみたところ、70℃、80℃では真空度による差がみられなかったが、100℃加熱では真空度が高いほど軟らかくなった。4)総アスコルビン酸含量についてみたところ、100℃では真空度による差はみられなかった。しかし、30Torrで袋詰め包装された大根は、80℃並びに70℃で加熱すると、Controlよりも総アスコルビン酸含量が高かった。酸化型アスコルビン酸含量は真空度が高いほど低い傾向にあった。5)大根の糖は大部分還元糖であり、袋詰め試料は真空度並びに加熱温度に関わらず、未加熱試料のレベルを維持していた。Controlはいずれの加熱温度でも糖が減少した。以上の結果から大根を真空調理する場合は80℃以上の温度で真空度は高い方がよいと考えられた。
著者
荒木 直幸 古田 貴音 小原 隆由 山内 直樹 執行 正義
出版者
園芸学会
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.230-235, 2003-05-15
被引用文献数
1 2

ワケギ5品種から構成される9系統(ウイルスフリー系統;広島1号〜広島9号)を用いて,16通りのプライマー組み合わせについて,AFLP分析を行い,品種・系統識別の可能性を検討した.ワケギのAFLP分析には,16通りのプライマー組み合わせのうち12通りが有効で,用いた9系統において総数678本のピークが観察された.ワケギ栽培系統を識別するために利用できる11種類のAFLPマーカー(総数の1.62%)が得られた.これらのマーカーの有無により,広島1号('下関')と広島2号('寒知らず'早生系)との識別は不可能であったが,他の系続開の識別は可能であった.ワケギの祖先種であるネギおよびシャロットを用いて,同じ12プライマー組み合わせに関する分析を行ったところ,ワケギ9系統から得られた総ピーク698本は,26.3%がネギに, 23.5%がシャロットにそれぞれ由来していると考えられた.さらに,11種類のワケギAFLPマーカーに関しては,5種類がネギに,3種類がシャロットにそれぞれ由来していることが推定された.これらの結果は,ネギとシャロットがワケギの祖先種であるとするこれまでの報告を支持するものであった.本研究で得られたAFLPマーカーは,ワケギ栽培系統の識別に利用可能で,異品種もしくは異系統の混同防止に役立つものと考えられる.