著者
小室 康雄 岩木 満朗
出版者
The Phytopathological Society of Japan
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.98-102, 1968 (Released:2009-04-21)
参考文献数
10
被引用文献数
2 3

(1) わが国のトマトに発生の多いTMV-トマト系はタバコ(ブライトエロー)に局部病斑を作るだけで全身感染せず,トルコ種のXanthiに対してはTMV-普通系と同様,局部病斑を作らず全身感染する性質をもつている。製品たばこにこのTMV-トマト系がどの程度含まれているかを調査し,ひいてはトマトのモザイク病の伝染源になつているかどうかを推定しようと試みた。(2) まずわが国で栽培の多いといわれるタバコ7品種(ブライトエロー,だるま,遠州,ヒックス,桐ケ作,松川,水戸3号)に対しTMV-トマト系を接種し,それらタバコの反応を調べた。その結果,供試7品種はすべてその接種葉に局部病斑をつくるだけで全身感染しなかつた。一方,対照区として用いたTMV-普通系に対しては局部病斑はつくらず全身感染してモザイク症状を示した。(3) わが国で製造販売されている紙巻たばこ16種類,それぞれ20本についてまずTMVの検出を行ない,あわせてそのTMVの系統が普通系,トマト系のいずれに該当するかについて判別を行なつた。その結果,すべての紙巻たばこからTMVが検出された。その分離されたTMVの系統はすべて普通系と考えられるものであつた。11種類のたばこでは普通系のみが分離されたが,「ハイライト」,「こはく」,「ホープ」,「泉」,「エムエフ」の5種類からは普通系と重複してトマト系がある程度分離された。(4) 畑のトマトから分離されるTMVの大部分がTMV-トマト系であるという事実8)と,ここにあげた(2),(3)の結果とを併せ考えると,従来トマトのモザイク病の伝染源として製品たばこが重要な一つと考えられていたが,最近Broadbent2)が指摘しているように,わが国でもそれほど重要なものではないだろうと推論した。
著者
小室 康雄 明日山 秀文
出版者
The Phytopathological Society of Japan
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.77-82, 1955
被引用文献数
4

1) 主として東京附近で採集した各種植物モザイク株から判別植物に汁液接種して, キユウリ・モザイク・バイラス (CMV) の分離を試みた。1949年から55年に至る間47科150種 (試料数573点) の植物を供試したが, その中32科68種 (試料数202点) からCMVが分離された。<br>2) 外国でCMVの分離されている植物の中, トマト, タバコ, セルリ等37種の植物では本調査でもCMVを検出することができた。この中わが国で栽培または自生が比較的普通であり, モザイク株からの分離率が50%以上を示したものはキユウリメロン, タバコ, プリムラ, セルリ, ムシトリナデシコ, ハコベ, イヌビユ, フダンソウ, ホウレンソウ, ツユクサ, トウモロコシ等である。しかし次の植物では全く或いは殆んど分離されなかつた。キク, ダリア, マリーゴールド, キキヨウ, トウガラシ, ホオズキ, インゲン, エンドウ, アイリス, スイセン, ヒヤシンス, チユーリツプ, カラー, ユリ類。<br>3) 自然のモザイク株から今回始めてCMVが分離された植物は, シユンギク, カラスウリ, マクワウリ, ヘチマ, ワスレナグサ, シナワスレナグサ, オオトウワタ, ニチニチソウ, オトメザクラ, キバナ, クリンザクラ, ミツバ, イロマツヨイ (ゴデチア), ホウセンカ, アルサイク・クロバー, ダイコン, コマツナ, ヨウシユナタネ, カラシナ, キヤベツ, ハクサイ, セキチク, カワラナデシコ, スイセンノウ, カスミソウ, ミミナグサ, スベリヒユ, センニチコウ, ハゲイトウ, ソバ, ミヨウガ, ムラサキツユクサ, ヤブミヨウガ, サトイモ等30数種である。この中本調査で分離率が50%以上であり, かつわが国で比較的普通に栽培されるものは, シユンギク, ヘチマ, マクワウリ, ミツバ, ダイコン, ソバ, サトイモ等である。<br>4) 東京附近の雑草でCMVによるモザイク株が屡々観察されたのはツユクサ, ハコベ, ミミナグサ, カラスウリ, ミヨウガ等であつた。