著者
日原 由香子 成川 礼 蓮沼 誠久 増川 一 朝山 宗彦 蘆田 弘樹 天尾 豊 新井 宗仁 粟井 光一郎 得平 茂樹 小山内 崇 鞆 達也
出版者
公益社団法人 日本農芸化学会
雑誌
化学と生物 (ISSN:0453073X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.88-97, 2017

<p>化石燃料に代わるエネルギー源の確保が課題とされる昨今,光合成効率が高いシアノバクテリアや藻類を用いた燃料生産は,食糧生産と競合せず,カーボンニュートラルである点で注目を集めている.特にシアノバクテリアは,ゲノムや細胞の構造が単純で遺伝子操作が容易,増殖が速い,光合成能が高いなど,燃料生産ホストとして有利な性質を備えている.本稿では,多様性に富むシアノバクテリアのさまざまな性質を活かして,燃料生産技術の開発に取り組んだ最新の成果について解説する.</p>
著者
小山内 崇
出版者
独立行政法人理化学研究所
雑誌
戦略的な研究開発の推進 戦略的創造研究推進事業 ALCA(先端的低炭素化技術開発) 技術領域
巻号頁・発行日
2013 (Released:2015-09-30)

ラン藻は、遺伝子操作が容易な酸素発生型光合成細菌である。本研究では単細胞性ラン藻Synechocystisを中心に、コハク酸生産技術の開発を行う。コハク酸は、プラスチックなどの汎用化学工業原料として知られ、バイオベースの生産が進められている。コスト抑制には、細胞外への放出が重要であるが、申請者らの先行研究により、特定条件でのコハク酸の細胞外分泌が明らかになった。そこで本提案では、転写制御因子と概日時計遺伝子の改変によって糖異化を促進するという手法で、コハク酸を増加させる。また、メタボローム解析によって、代謝データの集積と代謝産物の相関解析・in silico解析を行い、コハク酸生産に向けた代謝の理解と制御を進める。また、ラン藻培養系の改良、適用ラン藻種の拡大、残渣の有効利用を検討し、低炭素型のコハク酸製造プロセスの開発、及び、幅広い物質生産に応用可能なラン藻細胞工場の構築を目指す。本提案では、炭素の流れを包括的かつ統合的に変える「炭素源供給の量的緩和」という新しい概念での代謝工学を確立するとともに、低炭素化に資する画期的なバイオリファイナリーを構築する。