- 著者
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蓮沼 誠久
近藤 昭彦
- 出版者
- 公益社団法人 日本油化学会
- 雑誌
- オレオサイエンス (ISSN:13458949)
- 巻号頁・発行日
- vol.14, no.3, pp.95-101, 2014 (Released:2017-02-01)
- 参考文献数
- 10
低炭素社会の構築に向けて,再生可能で食糧と競合しないリグノセルロース系バイオマス資源からバイオ燃料や化学品を生産する 「バイオリファイナリー」 の確立が求められている。糖プラットフォームを用いるバイオエタノール生産を例に取ると,そのプロセスは、結晶化したバイオマスを膨潤化する前処理工程,バイオマスを加水分解する酵素処理工程,微生物による発酵工程,生産物の分離回収工程から成り立っており,省エネルギーかつ低コストなプロセス開発の成否が実用化の鍵を握っている。微生物の細胞表層にセルラーゼを集積させる「細胞表層工学技術」は,酵素生産と糖化,発酵をワンパッケージ化することが可能であり,プロセスを簡略化することができる。また、高価なセルラーゼ製剤の生産に必要となる材料や設備の省略が可能となる。一方で,発酵を効率化するには,微生物細胞内の代謝メカニズムを機能的な方向に改変する必要がある。筆者らはトランスクリプトーム解析やメタボローム解析等のマルチオミクス技術を活用して微生物の代謝系を遺伝子レベルや代謝物レベルで網羅的に解析することで新規の微生物改変戦略を立案し,その発酵性能を向上させることに成功してきた。微生物をより優れたエタノール生産工場にするためには,代謝をシステムとして理解し,合理的に改変することが重要である。本稿では細胞表層工学技術と代謝工学技術を組合せた微生物によるバイオエタノール生産について紹介する。