著者
小島 伸之
出版者
「宗教と社会」学会
雑誌
宗教と社会 (ISSN:13424726)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.69-86, 2008

特別高等警察の宗教取締を評するに際して、国家権力による「宗教弾圧」という定型句が一般に用いられることが多い。研究者の多くもそれを受け入れているといえよう。しかし、「宗教弾圧」を行った側である特高警察が、なぜ宗教を取締ったのかについて、その論理を内在的且つ実証的に検討した研究はそれほど蓄積されていないのもまた事実である。本稿は、特高警察の宗教取締の論理を内在的に理解するひとつの試みとして、一般に特高警察が弾圧した二大不敬教団事件と位置づけられている「第二次大本事件」と「ひとのみち教団事件」を対比し、「不敬」の背後にある両事件の異質性を明らかにすることを目的としている。具体的には、第二次大本事件とひとのみち教団事件について、先行研究での位置づけを整理した上で、『特高月報』の取締報告を繙き、先行研究が「二大不敬事件」-「国体」に対する「異端」説に対する取締-として説明してきた両教団の取締が、それぞれ反体制的社会運動、呪術迷信的社会運動という異なる理由に基づいて取締を受けたことを明らかにするものである。
著者
小島 伸之
出版者
「宗教と社会」学会
雑誌
宗教と社会 (ISSN:13424726)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.69-86, 2008-06-14 (Released:2017-07-18)

特別高等警察の宗教取締を評するに際して、国家権力による「宗教弾圧」という定型句が一般に用いられることが多い。研究者の多くもそれを受け入れているといえよう。しかし、「宗教弾圧」を行った側である特高警察が、なぜ宗教を取締ったのかについて、その論理を内在的且つ実証的に検討した研究はそれほど蓄積されていないのもまた事実である。本稿は、特高警察の宗教取締の論理を内在的に理解するひとつの試みとして、一般に特高警察が弾圧した二大不敬教団事件と位置づけられている「第二次大本事件」と「ひとのみち教団事件」を対比し、「不敬」の背後にある両事件の異質性を明らかにすることを目的としている。具体的には、第二次大本事件とひとのみち教団事件について、先行研究での位置づけを整理した上で、『特高月報』の取締報告を繙き、先行研究が「二大不敬事件」-「国体」に対する「異端」説に対する取締-として説明してきた両教団の取締が、それぞれ反体制的社会運動、呪術迷信的社会運動という異なる理由に基づいて取締を受けたことを明らかにするものである。
著者
小島 伸之
出版者
「宗教と社会」学会
雑誌
宗教と社会 (ISSN:13424726)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.25-47, 1998-07-06 (Released:2017-07-18)

本稿は、1899年(明治32年)宗教法案の評価を再検討するものである。先行研究における法案の評価は二つに分かれている。すなわち、宗教団体の自治権に変わって政府の直接把握をも射程に入れた宗教統制法だとする立場と、一定の範囲で教派宗派の自治を認め原則として政教分離の主義に立つ法律とする立場の二つである。この評価の違いは、法案の「教会」「寺」「教派」「宗派」規定の理解が鍵になっている。そこで、本稿は「教会」「寺」「教派」「宗派」規定を、条文と議会の議事録の分析によって実証的に検討した。その結果、法案は法人格取得のための許可ないし自治団体としての認可を求めているにすぎず、宗教上の結社一般については許認可を求めていないこと、教派宗派による自治を前提として、「教派」「宗派」と「宗教委員会」規定を置いていることなどを論証した。その結果、前者の立場は取り難いことが明らかになった。