著者
小島 祥美
出版者
国際ボランティア学会
雑誌
ボランティア学研究 (ISSN:13459511)
巻号頁・発行日
no.11, pp.21-33, 2011-12-28

本稿は、日本社会の水面下で深刻化しつつある学齢超過者の学習権というグローバルな課題について、就学支援という形で支えるローカルの実践事例から、ボランティアの意義を考察したものである。未だ日本に居住する外国人の初等教育が保障される仕組みは構築されていない。そのため、学齢(日本の義務教育年限)期であるにもかからず、学校に通ってない不就学の子どもが実在する。こうした背景により、学齢期に不就学であった外国人住民は学齢を超過した時には義務教育未修了者となるものの、社会から「見えない」存在であるがために、日本社会では学齢を超過した外国人の学習権という課題が置き去りにされてきた。そのなかで、外国人が多く暮らす地域では、ボランティアが中心となり、学齢を超過した義務教育未修了の外国人住民の就学支援を行っている。画一的な思考ではなくグローバルとローカルの複眼的思考を持ったボランティアの尽力は、学齢超過者の「日本で生活していく中で高校進学して学力を向上したい」「美容師になりたい」などの夢の具現化に大きく寄与している。
著者
小島 祥美
出版者
日本国際保健医療学会
雑誌
国際保健医療 (ISSN:09176543)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.3-8, 2008 (Released:2008-06-02)
参考文献数
5

国籍を問わずすべての子どもの教育を受ける権利が認められている「児童(子ども)の権利条約」に日本も批准している。しかしながら日本で暮らす外国人の子どもは実際には就学が「恩恵的」な形でしか許可されておらず、国際基準となっている初等教育の教育機会が均等に保障されていない。このような背景から、外国人の子どもの就学と不就学の課題を考える際に最も基本的な資料である就学状況を明らかにした調査は、いまだ実施されていなかった。 本研究では、外国人集住地域である岐阜県可児市をパイロット地域とし、可児市、可児市教育委員会、可児市国際交流協会、岐阜県等と協働し、パイロット地域に暮らす就学年齢期に相当する全国籍の外国人を対象に就学実態調査を2年間実施した。その結果、外国人の就学実態が全国で初めて明らかになった。また分析の結果、不就学をきたす理由等も明らかになった。とりわけ本調査は可児市から提供された外国人登録情報を基に実施したが、地域住民とコミュニティの協力により基本情報外の外国人住民の就学状況の把握も可能となった。つまり、文字通りに「すべて」の就学状況が明らかになったのである。その結果、調査中に把握した基本情報外の子どもは不就学である比率が高いこともわかった。 可児市では調査結果を受け、可児市長は「不就学ゼロ」を掲げ、2005年度より不就学ゼロを目指した取り組み外国人児童生徒学習保障事業が開始した。同事業は、就学実態調査を実施する際に協働した行政・民間団体等が連携し、機能している。これら可児市の実践は、不就学ゼロを目指すモデル事業として、全国から視察者が絶えない。
著者
佐藤 誠 峯 陽一 文 京洙 シャーニー ジョルジオ カルロス マリア・レイナルース 中村 尚司 鄭 雅英 佐藤 千鶴子 安藤 次男 小島 祥美 大倉 三和 スコーマン マキシ ソロモン フセイン コーネリッセン スカーレット バレスカス マリア・ロザリオ ベイリー エイドリアン アティエンサ マリア・エラ ハートウェル レオン デヤヘール ニコラ 大西 裕子 坂田 有弥
出版者
立命館大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

国際人口移動を単なる労働移民の問題にとどまらない複合現象として理解する視点にたち、日本とアジア、南アフリカと南部アフリカという二地域における国際人口移動の実態把握と比較分析を通じて、流出地域と流入地域において人間の安全が保障されるための課題は何であるのかを、人間安全保障の批判的摂取をふまえつつ解明した。具体的には、社会セクターにおける人口移動に焦点をあて、国際人口移動研究への理論的貢献を行った。